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関数の順序問題

今年の全国学力テストなのですが,数学Aの大問9について書くのを,すっかり忘れていました.以下のURLで読むことのできる出題です.

問題文は以下のとおり.

[9] 下の表は,ある運送会社の書類の宅配サービスの料金表です。

重量 100gまで 250gまで 500gまで 1kgまで
料金 150円 190円 270円 320円

      このサービスで扱える書類の重量は1kgまでです。
このとき,1kgまでの書類の重量と料金について,「重量を決めると,それにともなって料金がただ1つ決まる」という関係があります。
下線部を,次のように表すとき,[①]と[②]に当てはまる言葉を書きなさい。

[①]は[②]の関数である。

答えは,[①]が料金,[②]が重量で,「料金は重量の関数である。」という文になります.
逆は間違いですね.「重量は料金の関数である」という文にしてみると,これは,「料金を決めると,それにともなって重量がただ1つ決まる」を意味しますが,この料金表のもとで,例えば150円という料金に対して,重量がただ1つ,決まるわけではありません*1


中学校学習指導要領と解説で,関数をどのように規定しているか,調べてみました.

第2 各学年の目標及び内容
〔第1学年〕
2 内容
C 関数
(1) 具体的な事象の中から二つの数量を取り出し,それらの変化や対応を調べることを通して,比例,反比例の関係についての理解を深めるとともに,関数関係を見いだし表現し考察する能力を培う。
ア 関数関係の意味を理解すること。
イ 比例,反比例の意味を理解すること。
ウ 座標の意味を理解すること。
エ 比例,反比例を表,式,グラフなどで表し,それらの特徴を理解すること。
オ 比例,反比例を用いて具体的な事象をとらえ説明すること。

第2章 各教科 第3節 数学:文部科学省

関数関係の意味
関数関係とは,関係する二つの数量について,一方の値を決めれば他方の値がただ一つ決まるような関係を意味している。ここでは,二つの数量の関係について,「…と…は関数関係にある」,「…は…の関数である」などという表現を用いてとらえ,変化や対応の様子に注目して関数関係についての理解を深める。
第1学年では,比例,反比例を中心に指導することになるが,比例,反比例は関数の一例である。関数についての学習の初期段階においては,比例と反比例だけが関数であるような誤解に陥らないよう,関数の概念の広がりを実感することができるようにし,関数関係を見いだし表現し考察する能力を培う。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/01/05/1234912_005.pdf#page=22

ふむふむ.「xとyは関数関係にある」や「yはxの関数である」といった書き方は,中学1年で学習するとのこと.
「の関数」という文字列で,PDFファイルを検索すると,重量と料金の事例が見つかりました.

こうした学習を基にして,いろいろな事象の中にある関数関係の特徴を説明する活動に取り組む機会を設ける。交通機関の乗車距離と料金の関係や郵便物の重さと料金の関係に着目してその関係を調べ,料金が距離や重さの関数であることを明らかにし,その関係を表やグラフに表して変化や対応の特徴を説明する。(略)関数関係は必ず式で表すことができると考えている生徒については,伴って変わる二つの数量について,一方の値を決めたとき他方の値がただ一つに決まれば関数関係といえることを確認する。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/01/05/1234912_005.pdf#page=93

「料金の関係や郵便物の重さと料金の関係」「料金が(略)重さの関数である」と明記されています.
これは中学3年の数学的活動に位置づけられていますが,料金が重さの関数となることを問うのは,中学2年までの学習内容に基づく全国学力テストでも,実施して問題ないわけです.そしてこの件は,「中学の全国学力テストは中2までの内容」という,自分自身の思い込みを,吹き飛ばすこととなりました.


昔書いたこと:

「さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。」という出題と,「しき」と「こたえ」を書く欄からなる.児童は「しき」に「5×3=15」,「こたえ」に「15こ」と書いた.すると「こたえ」はマル印がついて正解だが,「しき」がバツ印で不正解となっている.そしてこの問題の正解となる式「3×5=15」が,赤ペンで書き加えられている.問題文では5が先,3が後に出現しているが,学習した「かけ算の意味」をもとに,2つの数をひっくり返して「3×5」と書かないといけない,というのが「かけ算の順序」の基本的な考え方である.

かけ算の順序論争について(日本語版)

中学校学習指導要領解説 数学編では(略)「…と…は関数関係にある」「…は…の関数である」(p.88)という表現もあり,それぞれ《と比例》《に比例》の一般化となっています.

と比例・に比例

*1:もちろん「100g以下だ」と推論することはできます.表の「重量」より右に書かれているのは,階級だけれど,表より下そして出題文に出現する「重量」では,階級ではなく,例えば78gといった数量を想像しないといけないわけで.