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平成27年度算数教科書読み比べ(5)〜順序を変えても答えは同じ

「じゅんじょをかえても答えは同じ」を確認する,啓林館 わくわく算数 3下 p.16の問題*1は次のとおりです.

うんていと木と校しゃの高さを比べました。
うんていの高さは2mです。
木の高さは,うんていの高さの3倍です。
校しゃの高さは,木の高さの2倍です。
校しゃの高さは,何mですか。

問題文の右には,雲梯・木・校舎の絵があります.また問題文と絵の下には,ひなたさん・だいちさんという2人が登場し,それぞれ考え方が示されています.ひなたさんには「さきに,木の高さを計算して……」,だいちさんには「さきに,校しゃの高さはうんていの高さの何倍かを計算して……」という吹き出しが,それぞれついています.雲梯・木・校舎の高さの関係図もあり,ひなたさんのほうには「木」の下に「6m」が書かれているのに対し,だいちさんのほうでは,「うんてい」と「校しゃ」の間に「3×2倍」の式と矢印がついています.
式ですが,ひなたさんの考え方をもとにすると,まず2×3=6を計算し,木の高さが6mと分かります.そして6×2=12を計算し,校舎の高さは12mとなります.
だいちさんの考え方では,3×2=6で,ここから「校しゃの高さは,うんていの高さの6倍です。」と言えます.あとは2×6=12とし,校舎の高さは12mとなります.
次のページでは,「1つの式に表す」ことがなされ,ひなたさんの式は2×3×2=12,だいちさんの式は2×(3×2)=12です.まとめとして,「多くの数をかけるときには,計算するじゅんじょをかえても,答えは同じです。」が明記されています.
日文 小学算数 3年上 p.15では「ドーナツを3こずつ入れた箱を,1人に2箱ずつ4人に配ります。ドーナツは,全部で何こいりますか。」という問題に対して,「1人分のドーナツの数」から求める(3×2)×4=24と,「箱の数」から求める3×(2×4)=24のいずれも,積は同じとなることをもとに,「3つの数をかけるときは,計算するじゅんじょをかえてかけても,答えは同じになります。」としています.
学図 みんなと学ぶ 小学校算数 3年上 p.13では,「かけ算では,じゅんじょをかえてかけても,答えは同じになります。」です.
教出 小学算数 3上 p.19では,「結合のきまり」として,「かけ算では,前からじゅんにかけても,後の2つを先にかけても,答えは同じになります。」とありました.大日本 新版たのしい算数3 p.46では「3つの数のかけ算では,はじめの2つの数を先にかけても,あとの2つの数を先にかけても,答えはおなじになります。」です.東書の3年の教科書では,見つけることができませんでした.
かけ算の「じゅんじょ」を,交換法則と関連づけて説明しているものは見当たらず*2結合法則と交換法則の両方を使って,効率良く計算するような例*3も,見つかりませんでした.
かけ算の順序がa×bとb×aの対比となっているのもまた,「ネットde真実」と言っていいのかもしれません.


以下は自分用メモです.啓林館の文章題は倍概念であり,次元に注意すると,n1[d]×n2×n3=n1n2n3[d]を,n1[d]×n2=n1n2[d]とn1n2[d]×n3=n1n2n3[d],n2×n3=n2n3とn1[d]×n2n3=n1n2n3[d]の2通りで求めています.日文の文章題は,パー書きで表せば見通しが良く,n1[d1/d2]×n2[d2/d3]×n3[d3]=n1n2n3[d1]に対して,n1[d1/d2]×n2[d2/d3]=n1n2[d1/d3]とn1n2[d1/d3]×n3[d3]=n1n2n3[d1],n2[d2/d3]×n3[d3]=n2n3[d2]とn1[d1/d2]×n2n3[d2]=n1n2n3[d1]の2通りの式が得られます.これらはVergnaudによるスカラー関係・関数関係の拡張と見なすこともできます.ただし,n1[d1/d2・d3]×n2[d2]×n3[d3]=n1n2n3[d1]で表される複比例には,対応していません.

(最終更新:2014-07-03 朝)

*1:「10. 計算のじゅんじょ」という単元になっておりhttp://shinko.ee-book.com/h27textbook/math/data/dp_detail_math.pdf#page=51,配当時数は1時間です.

*2:例えば日文 小学算数3年上 p.14では,交換法則について「かけ算では,かけられる数とかける数を入れかえて計算しても,答えは同じになります。」と記しています.

*3:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130424/1366749623に書いた「5×17×2」のような問題です.なお,各社の算数教科書では,結合法則の学習や計算問題で出てくるのは,1位数すなわち1桁の数のかけ算ばかりでした.