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かける数が割合?

うーんなんだか,まあ算数の教え方をひとつ読んだので,気軽にはてブをしました.

1日おいて,もう少し読みました.

高校や教育委員会に働きかけをしてきたとのこと.それで内容を読んでいくと,いくらか気になる点が見つかりました.
提案の骨子は,a×b=xというかけ算の関係式において,aを1あたりの量,bを割合にあたる量と位置づけることです.具体例を一つ,引用*1しておくと:

Aさん5年生は次のような問題でした。
海の店で1kg800円のひなせカキを3.5kg買って食べました。いくらはらいましたか?
(この1行の問題作りによって、この生徒の「割合理解度」「計算式の成り立ち理解度」「単位の相互関係」「掛け算式か割り算式かの判断力」等諸々の意味が含まれていて、そのすべてがかなえられています。
1kgに対して・・・3.5kgと1より増加させた割合にした
1あたり量の800円が割合を増加させた事により代金が800円より大きくなった 
800円 / 1kg × 3.5kg=  で「割合」はかける数のことであると理解できていた

「割合」は算数の要・文章題を作れるようになると割合は勿論すべてが解決 - {シンプルイズベスト}算数・数学を理解する為には、「割合」「関数」の意味理解と使い方をシンプルに理解するのが早道です

何が気になるのかというと,800円/kg×3.5kgという式にしたときに,「3.5kg」を割合と見なしていることへの違和感です.
というのも,その式で割合と言えば,むしろ「800円/kg」のほうではないかと考えます.実際これは,「異種の二つの量の割合」になっています.
人口密度*2や速さも,「異種の二つの量の割合」であり,小学校の算数で,かけ算の式にする際には,単価も速さも,かけられる数に置かれます.
それと別に,思い浮かんだのは,提案する指導法や式のスキーマで,学習者が解けるようになる対象が,小学校のテストを通じて理解や活用が期待される「割合」よりも,小さいのではないかという疑問です.「800円/kg×3.5kg」の形,より一般に,かけられる数にあたる数量をパー書きとするものを強調していますが,それ以外にも,割合の式があります.
例を挙げると,今年実施された全国学力テスト(http://www.nier.go.jp/14chousa/14chousa.htm)の小学校算数A大問2です.80cmの白いテープを基準として,その1.2倍にあたる赤いテープと,0.4倍にあたる青いテープの長さを求める式を,それぞれ4つの選択肢の中から選ばせています.正解の式は80×1.2,80×0.4なのですが,1あたりの量を使った式で表すのは容易ではありません.
「はじき」は,個人的には,1965年の座談会に見られる「乗法・除法の適用の場を構造として捉える」が発展したものだと認識しています.海外の算数教育にも見られるのは,はじき〜図で紹介してきました.はじきの「は」,すなわち速さに該当する量は,「3km/時」としてパー書きで表すことができ*3,速さ以外への適用も,期待できます.
「くもわ」は,「もとの量」と「比べ(られ)る量」が同種の量であり,違いがわかりにくい---どちらが「もとの量」で,どちらが「比べ(られ)る量」かの選択が容易でない---という点で,「はじき」よりも劣化した,3用法の可視化であると思っています.

別件ですが:

まず初めに主張したいことは、学力テストであれば択一式の出題はやめて戴きたいと思います。当たるも八卦・当たらぬも八卦例示した中から、”どれにしようかな”で正解を得る場合もあるはずで、どうして正しい学力が統計として得られるのか疑問を持つものです。*4

文字式(未知数を求める)際に、理解が不安定な生徒に対してどの様な方法が! - {シンプルイズベスト}算数・数学を理解する為には、「割合」「関数」の意味理解と使い方をシンプルに理解するのが早道です

「学力」「統計」を持ち出すのであれば,項目応答理論を見ておきたいところです.等化は,古典的な学力テストで容易に行えない,理論の強みだと思います.

「当たるも八卦・当たらぬも八卦」は,wikipedia:項目応答理論に書かれている「当て推量パラメータ」に対応します.言い換えると,4択問題なら,25%くらいは「当たるも八卦」で正解の選択肢を選ぶ受験者がいることを折り込み済みで,モデルが提案・活用されています.

(最終更新:2014-09-13 朝)

*1:引用にあたり改行・空行を取り除きました.以下同じです.

*2:「1平方メートル当たり何人」「1kg当たり何円」だけでなく「1人当たり何平方メートル」「1円当たり何kg」も求められる,という共通点もあります.

*3:この形の式は小学校の算数には出てこず,学校で使うかどうかは先生の裁量となりますが.

*4:引用にあたり改行・空行を取り除きました.