その1
土曜日の朝.車内にいるのは,自分とすえの子.
踏切の前で,カンカンカンと鳴り始めた.止まろう.
遮断機が下りた.最前列で,電車を見ることができるぞ.
「さてすえの子よ」
「…」
「電車は,あっちから来るのかな? こっちからかな?」
「いちごでんしゃ!」
「いや,そうやなくて」
「いちごでんしゃ!」
「お前,そんなにいちご電車が好きなんか」
「たまでんしゃかなあ」
「迷うんかい?」
「やっぱり,いちごでんしゃ!」
「その決意の強さには,参るゎ.とか言うてると,電車が来たぞ,右から…ほんまや,いちご電車や.お前,予知能力あるんか!?」
いちご電車とは:http://www.wakayama-dentetsu.co.jp/train/ichigo.html,wikipedia:和歌山電鐵2270系電車
貴志川線には,普通の車体のほか,「いちご電車」「おもちゃ電車」「たま電車」「きいちゃん電車」も走っています.時刻表検索で,いつどの車体が走るかが分かります.上の出来事は10月4日だったのですが,この日と次の日は,普通の車体が走っていなかったそうで.
その2
日曜日の朝.
「おはよう」
「あ,ママ,おはようさん.んで,すえの子も一緒かいな」
「そやねん.この子がねえ」
「ん? 何かしよるんか」
「あたしを起こしにかかるねん」
「なんじゃそら」
「まずは,寝てるあたしの上に乗っかかってな」
「ほお」
「それでも起きひんなあと分かったら…」
「…」
「ママのメガネ持ってきて,『はい』言うんやで!!」
「ケース開けてメガネ取るんか?」
「せやで」
「そらまたすごいな.…すえの子よ,お前,一人で寝間を出て,こっちの部屋に来てええんやぞ」
「けど起きるときはママといっしょ,やねんなあ」