「みんな乗ったかぁ?」
「のった!!」
「よっしゃ.ドアも閉まってるな.ほな,帰るぞ」
「パパぁ」
「何やうえの子よ」
「アイスかって」
「んん…食べたいんか?」
「たべたい」
「まあせやな,今日はずいぶんとあったかかったし,みんなよお遊んだし,途中で買おか.ええよなママ?」
「うん,ええよ」
「やったぁ」
「ただしやな.これから,高野山の町並みを通り抜けて,家に帰るんやが…」
「…」
「高野山では止まらへんぞ.通り抜けて,最初のコンビニに入っちゃるからな」
「わかった」
(走る,走る,俺たち…)
「ふう,高野山を抜けたが…まだまだ車は多いなあ」
「パパ,まだぁ?」
「うーん,もうちょっと走らんと,コンビニは見つからんかなあ」
「あたしねえ,もぉ,くちのじゅんびもしてんから」
「は? お前いま何て言うた」
「くちのじゅんび」
「そこまでして早よくいたいんかいな」
「コンビニあったら,あたしもかいたいねん!」
「店内で食うなよ」
「そんなんせえへんよ」
「あ,パパ,わかった」
「何や?」
「『口の準備』とちゃうねん,『靴の準備』や!」
「靴の…準備?」
「ほらこの子ら,車に入ったらすぐ,靴を脱ぎたがるやん」
「せやなあ」
「うえの子ちゃんね,靴,履いて,お店に着いたらすぐに車から出られるようにしてのよ!」
「なるほど,それにしても気が早いなあ」
- 某年月日,高野山の紅葉を見に行こうと,車で出かけました.しかし着いてみると,人も車も多い一方で,葉っぱが十分に色づいておりません.そこで立ち止まらずに,高野龍神スカイラインを通り,奈良県野迫川村の,平家の里へ行きました.ここはほとんど人がおらず,お弁当を食べたり,イチョウのきれいな葉っぱを取ったりしました.上記はそこからの帰りの話です.高野山を出て近辺にコンビニがないのは織り込み済みです.
- コンビニに着いたときには,うえの子だけが眠っていました.子らには雪見だいふく,妻はアイスコーヒー,そして自分は苺入りの白くまアイスを買いました.車に戻ってほどなく,うえの子も目を覚ましまして,あたしも見に行きたかったとグズるところに,こちらは白くまアイスの残り3分の2を差し出しました.