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協働教育の可能性

水曜日,某ゼミにてグループワークの最終発表を聴きました.
知的モデリングクラスタ所属の修士学生は,3グループに振り分けられ,各グループで課題を決めて問題解決に取り組んでいました.
課題の対象には,例年,大学内にあるものが選ばれています.今回は,バス停周辺(朝の混雑解消),学部近辺の樹木(景観改善),そして学内カフェ(言わずもがな)でした.
分析や提案をしていくのに先立って,前二者は平面図などを取り寄せ,後者はカフェの経営者に説明し同意を得ていました.また各学生の持つ知識・技能をうまく組み合わせて,成果を視覚化していました.
グループワークのタスクが終わり,学生はこれからまた,自分の研究に集中していくことになります.教員側ではこの活動を,対外的にアピールし,より発展させていく必要があると感じています.
そこで連想するのは,「協働教育」です.この語には,良く言えば多様性,悪く言えば曖昧さや恣意性があるようにも思っています.今年ことしあるところで,協働教育について意見を求められ,即興で回答をしました.以下,そこで言ったこと,言わなかったこと,いま思い浮かぶことを整理しておきます.
昨年度から,クリエ*1のセンター員を務めています.その中で最も,協働教育に関係しそうなのは,学内予算を得て開催している講座の件です.個人的には予算が決定してからのお付き合いですが,依頼があってファシリテータとして参加し,アドバイスをしてきました*2.また学科内では,Hack U*3を実施しています.
それらの経験をもとにすると,知識・技能・関心が異なる人々が集まって相応に労力をかけ,一つの「ものづくり」を通じて,講義で得がたいことを学ぶのは,教育的価値のある活動と言ってよく,教員としては引き続き,サポートしていきたいものです.
その一方で,不安もあります.ファシリテータの件にせよ,Hack Uにせよ,今年は成功だったと主催側の一人として喜んだところで,来年も同じように,うまくいく保証はありません.加えて,来年度から所属学部の改組により,2年のメジャー決定において*4,1年のうちに良い成績をとろう,そして成績や単位に関係しそうにない活動は避けよう,といった方向に力が働く*5ようにも思っています.
それぞれにおいて次年度以降も参加者が集まり,成功そして発展をしていくためには,何といっても学生の協力です.まずは参加してもらうための間口を広げておき,そして1回参加してもらったら,次回はサポーターに回ってもらうことが不可欠です.
そこに教育の視点をつけ加えると,教員と学生の「関わり方」の違いでしょうか*6.Hack Uでもクリエの講座でも,教員側・主催側は「回す」こと,言ってみればサイクルを思い描きます.それに対し各学生は,毎年活動に加わるとしても4年で卒業するとすれば*7,直線的に,いわばラインに乗った形で,毎年同じ時期に活動に関わることになります.
これらの違いをよく考慮するとともに,学生は上にあがると協力してくれる割合や度合いが下がりがちであり,また担当教員も固定ではなく緩やかな変動がなされるべき点は忘れないようにして,毎年定期的に開催し,「大学の実績」を積み上げていくのが,現実的な流れではないかと思っています.


ここまで書いてから,大学の協働教育について調べてみると,むしろ国際的な話,例えば米国をはじめ外国の大学との協働として,進められてきたのを知りました.平成23年度の学振の事業にも,その意味で「協働教育」が使われています.

自分の範囲で,国際的な協力は望めそうもありません.
あ,いえ,ありました.2005年9月から半年間,フランスの工科大学の交換留学生を受け入れ指導し,国際会議発表の成果の一部となりました*8.いま振り返るとあれは,自分にとっての国際的な(そしてささやかな)協働教育なのでした.

*1:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140505/1399248000

*2:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140807/1407420548

*3:http://u.yhacks.jp/wakayama2014/

*4:メジャーに定員はないとはいえ,実験・演習や研究室指導を考えると,目に見えない上限の存在は,学生にも想起できるのです.

*5:かといって,クリエのプロジェクトあるいは講座に参加することや,Hack Uにエントリすることを,特定のメジャーをとるための必要条件あるいは加点要素にするわけにもいきませんし.

*6:この段落は,ほぼ丸ごと,実際に言ったことです.なぜこれが思い浮かんだのかというと,一言でいうなら「工学的思いやりの心」です.具体的には,何らかのシステムにおいてどんな人がいて,それぞれは何ができて何ができず,何をしたいのかを明確にすることの必要性を,学生時代は暗号プロトコルの安全性検証に取り組みながら,いまは情報検索システムの設計・開発をする中で,常に考えてきたのでした.

*7:某ゼミのグループワークも,学生はM1とM2の2回だけですが.

*8:もちろん,この学生も共著者に入ってもらいました.