わさっきhb

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文字を用いて式に表現するとき

a÷bcの議論で,ある主張が目に留まりました.

教科書(出版年やページは不明ですが)の文字式の扱いについて引用したあと,「3×a=3a」「x×(−4)=−4x」「a÷4=a/4」という例に対して,「それぞれの左辺も文字式のはず。」というツッコミを入れています.
「3×a」「x×(−4)」「a÷4」は,その直前の「積の表し方」「商の表し方」に反するため,文字式とみなされないのではないか,という意図でしょうか.
「3×a=3a」を見て,容易に思い浮かぶのは,「これまでは(小学校では)3×aと書いてきたけれど,積の表し方を理解したら,3aと表すことにしよう」です.こう解釈するとき,「=」は等号というよりは,×や÷を含む文字式から,それらを含まない文字式への変換となります(例の残り2つも同様です).左辺も右辺も,文字式です.
左辺だとか等号だとかが,良くないのであれば,次のように問うのが,一つの手段かもしれません:「次の式を,×や÷を使わない式で表しなさい.(1) 3×a (2) x×(−4) (3) a÷4」.これだと等号を使わずに,答えを書かせることができます.
という路線には行きません.もう少し読むと,次のようにあります.

私なら、以下のように説明する。

文字同士、文字と数字の間の「×」は省略できる。ただし、文字と数字の間の「×」を省略する場合は「数字」×「文字」にしないとならない。
「÷」記号は分数表記によって「÷」を使わない表記が可能。

以上のことから、文字式は「×」「÷」を使わない形で表現できるので、このような形にすることが多い。

これまた,引っかかりを覚えます.例えば「ただし」から始まる文の2回目の乗算記号は,もし塾で先生がそのようにおっしゃったり,ホワイトボードに書いたりしたら,生徒は戸惑いそうです.
といったところで,指導要領と見比べておきます.『中学校学習指導要領解説 数学編』PDF版のp.106では,次のようになっています.

文字を用いた式における乗法と除法の表し方を知ること
文字を用いて数量の関係や法則などを式に表現するとき,乗法の記号×は,文字と文字の間や,数と文字の間では普通は省略し,除法の記号÷は,特に必要な場合のほかは,それを用いないで分数の形で表すことを学習する。例えば,
a\times b=aba\div b=\frac{a}{b}a\times a=a^2
などは,その基本的なものである。
これによっていろいろな式の表現が一層簡潔になり,式の取扱いを能率的に行うこ
とができる。

これは納得の行く記述です.とくに「普通は」「特に必要な場合のほかは」が適切に配置されており*1,×や÷を使わない書き方を学習してからも,それらを使う書き方があってもよいということになります.実際この文書でも,多項式を単項式でわる例として出現しますし,全国学力テストの問題文や解答類型でも,÷を含む式を見てきました.
その一方で,解説の書き方では,3×aは3aになるけれど,a×3だと,a3になってしまうかもしれません*2.これについては,最初に挙げた式のうち,「x×(−4)=−4x」が,教科書レベルでその解消を図っていると,読むことができます.
「私なら」の提案は,教科書より前にある文書との照合がなされていないほか,例となる書き方が見当たらないのが,残念なところでした.掲示板のその後の書き込みですが,電話で問い合わせた結果を「自分のもの」としている感があり,掲示板の読者だとか,回答に関わった方々への配慮*3,もっと言うと「みんなのもの」とする意思が見当たらないところに,もどかしさを覚えます.

*1:論文を読んでいて"typically"を見かけたとき,これがなかったら常に成り立つという主張になってしまうんだよなと感じたことがあるのを,思い出します.

*2:a×3=a3としないのは,中学を超えた範囲の数学の学習経験のほか,学習指導要領やその解説では,あらゆる事項(算数・数学なら,式)を例示し解説することが目的でないので,書かれていない事項については適宜判断するというのが,読者に期待されているから,ですかね.

*3:1コだけ引用するとhttp://8254.teacup.com/kakezannojunjo/bbs/t38/382の「単項式同士の除法が目的であり、どーたらこーたら、」には鼻水出そうになった.