わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

社会的問題,哲学的問題

「いま教科書を読み上げた中に『社会的問題』という言葉が出てきました.我々,工学に携わる者が,この言葉を見たら,『人々の問題』,あるいは『人間関係を含む問題』に置き換えて,理解してください.
問題を解決する(したい)という立場からだと,こんな言い方もできます.
数式だとか実験室の活動だとか,機械装置やコンピュータで動くプログラムだとかいった,工学的な問題設定をして得られる成果だけでは,解決に不十分な問題があります.それを人々のいるところに適用し,確かにうまくいったのを見届けて,やっと,その『社会的問題』は解決できた,と言えるのです.
同様の,配慮が必要とされる話として,教科書には載っていませんでしたが,『哲学的問題』というのがあります.
『哲学』って何? 知っておかないと問題解決できないの? …決してそんなことはありません.
工学の本の中に,もし,『哲学的な問題』なんて言葉が出てきたら,高い確率でその直後に,工学だったら,あるいはその本の展開としては,対象をどのように扱うかが書かれています.
以前に読んだ例では,時間の概念があります.
物事に集中していると,時間があっという間に進んだように感じたり,たった数秒が,うんと長い時間のように思ったりすることも,あるかもしれません.
そういった主観的な時間の経過まで,考慮に入れると,工学的・数学的に答えを出すのが大変になります.そこで工学の問題とする際,時間を,1次元の連続的または離散的な値の集合*1として扱うのが一般的です.
その取り扱いのもとで,時不変システム---気になった人はあとで自習してください---が意味を持ちます.あるいは条件を追加して,スタート時刻があってそれよりは過去にさかのぼれないけれども,進む方にはいくらでも進める,そんな時間の制限*2を入れると,議論がしやすくなったりもします.
大学の,専門の授業で出てくる問題は,答えを求め,また答えやその求め方が確かに正しいねと,みなが確認しやすくするために,お膳立てがなされている場合がほとんどです.それを,大学の外で適用しようとしたとき,そうでなくても,自分のしていることを家族や親類や,アルバイトの塾・家庭教師なら教え子に,話そうとするときには,『社会的』『哲学的』といった種類の問題が,『工学的』なそれらと別にあることにも,ちょっとは注意を払いましょう」

なにこれ

「社会的問題」は,前の月曜日の1年セミナー*3で教科書の最初の章を読み上げたときに,補足しました.「哲学的問題」は,この記事のための創作です.

*1:より正確には全順序集合,すなわち対象とする時間内の任意の2つの元(時刻)a,bについて,a<b,a=b,a>bのうちちょうど1つが成立することが仮定されます.

*2:「半直線」のことです.この語は,自身は中学1年で学習しましたが,今も学んでいるのかなと,『中学校学習指導要領解説 数学編』で調べてみると,1箇所だけ,それも角の二等分線の作図の中で,カッコ書きで記載がありました.用語として,学んでいない可能性が高いですね.

*3:うちの学科の2年生以上ならびに卒業生へ:昨年度まで「基礎教養セミナー」という科目だったのが,学部改組・カリキュラム改定に伴い,今年度より「システム工学入門セミナー」という名前に変わっています.学生番号と教員との対応づけは機械的(申込み制ではない)であり,教員の専門に基づくゼミは基本的に行えないこと,全員に履修を義務づけるけれども再履修できないのは,従来どおりです.教科書が指定されているのは,大きな違いの1つだと思います.ところで情報通信システム学科の基礎教養セミナーでは,教員ごとの実施のほか,月1回程度,外部の方の講演を聴いてもらいましたが,そういった「全体会」も,今年度,引き継がれています.1年向けオープンラボは,後期に(したがってシステム工学入門セミナーの日程から外れて)実施することが,検討されています.