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手順を書く〜和歌山バスの乗り降りを例に

いきなりですが問題です.「和歌山バスの乗り降り」を手順として書いたとき,以下のどちらが読みやすいでしょうか.

〔手順A〕
1. 乗車用のドアから入り,整理券があったら取る.
2. 車内では座るか立って,周りに迷惑をかけないようにし,降りるバス停のアナウンスがあったら(終点を除き)ボタンを押す.
3. 整理券と運賃を入れて,バスから降りる.

〔手順B〕
1. 後方のドアから入る.
2. 整理券を取る.
3. 座席に座るか,つり革を持って立つ.
4. 降車ボタンを押す.
5. 運転席横の機械に,整理券と運賃を入れる.
6. 前方のドアから出る.

解答の前に元ネタです.先週の情報処理科目で,1枚のスライド上で左右に並べました.
バスの乗降について言うと,上記は「後乗り後払い」です.和歌山バスのほか,南海バスや,大阪市バスも,この方式です.
それに対し都バスは「前乗り前払い」…と思いきやエリアによっては後乗り後払いもありましたか*1奈良交通は,もう少し手が込んでいて*2学園前駅から乗ったときは後払い,大学院大学で乗って学園前駅で降りるときには先払いだったのを覚えています.
授業でなぜ,こんな手順を見せたのかというと,バス通学する学生にとっては日常当たり前のこと,また和歌山バスに乗ったことのない学生にとっては後乗り後払いのルールを,時系列に注意して文章化するとこうなるんだよという例示を,試みたのでした.
演習課題のための見本という意味合いもあります.実際に課題では,日常生活の中から各自,手順にできるものを見つけて,文章化してもらいました.
といったところで解答ですが,手順Bのほうが読みやすいと言っていいでしょう.手順Aは,2番目のところに,いくつもの問題点を抱えています.全体が1文で長い上に,「周りに迷惑をかけないようにし」「(終点を除き)」が冗長に見えます(これらを書くのであれば,前後の項目にも,書き足さないとバランスがとれません).
それでは,我々は〔手順B〕のように文章化し,不慣れな人にアドバイスを送ったりすればいいのかというと,そうでもありません.全体を通して見ると,こちらは整理されすぎている印象があります.「降車ボタンを押す」の前に,いつ押すかを,書いておきたいところです.
〔手順A〕のほうが,〔手順B〕よりも良いという要素もあります.バスの乗り降りをイメージすると,「乗車」「車内」「降車」に大きく分けることができますが,表現はともあれ〔手順A〕の3項目は,これらと1対1に対応しています.それに対し〔手順B〕では,そういった対応づけが考慮されておらず,単に並べただけと見ることもできてしまいます.
とはいえ,〔手順B〕に対してその3つのフェーズを入れるのは,難しくありません.例えば1と3と5の前にそれぞれ,「乗るとき」「車内では」「降りるとき」という小見出しを置けばいいのです.これらにも,番号を振るのもいいでしょう.この3つの場面と,6つの手順には,異なる番号付けをしないといけません.番号付けの方法に関しては,Wordの箇条書き機能が有用です.
上に書いた「日常生活の中から各自,手順にできるものを見つけて,文章化」の課題ですが,番号は5項目以上・文章は800字以上という条件を課したところ,20〜30項目に分けて,各項目は〔手順B〕と同様に簡潔に書く答案が出てきました.
まあ授業時間は限られていますので(宿題にはしていませんし),まずは項目を洗い出して,項目を組み合わせるだとか,構造化だとかは二の次と思えばいいんでしょうかね.


授業で話したこと:

  • 本日は,「手順書の作成」を行ってもらいます.手順書を作っておくことで,実行する前に,本人や他の人が,順番通りに実施して大丈夫か,足りていない条件や情報・物品がないかなどを,チェックすることが可能となります.うまくいった経験を,手順書にすれば,他の人が再現しやすくなります.
  • 手順を書くことは,プロトコルと密接な関係があります.これまでの授業で,インターネット通信の約束事を「通信プロトコル」と呼んできましたが,これと別に,生化学などの分野で,実験をする前に手順書を作ることがありまして,「実験プロトコル」と呼ばれます.
  • 手順として書くときに,常に忘れてはいけないのは,「前後関係」です.「時系列」ともいいます.前のステップの作業が終わってから,新たなステップを実行する,ということです.

(リリース:2015-07-18 朝)