わさっきhb

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筆算の順序から進展

昨日,またツイートからのアクセスがありました.元ツイートは:

筆算の順序を読み直しました.この件は,その後に得た情報で,認識が変わった(あるいは強化された)というのが思い浮かびません.
いや,1つ,ありました.教科書展示会で見たのですが,どこの教科書会社だったか,3年の算数で,たしか,次のような図(絵)が載っていました.

○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○

4行10列のアレイです.この○の総数は,4×10でも,10×4でも求められるね,という展開になっていました.
名称はともかく,アレイに対し,かけ算の式にするのは,2年で学習しているはずです.2年と3年の学習の間でのスパイラル*1が,配慮されたのかもしれません.
ただ,これを見たとき,長い方を「10個」としているのが,筆算の手続きにおいて,かけられる数とかける数を交換する(交換して計算できる)根拠になるのかなと,考えたものです.
数を割り当ててみます.「74×23」を使うことにしましょう.大人モードでは,74×23=(70+4)×(20+3)=4×3+70×3+4×20+70×20と,展開ができます*2
さて,筆算するにあたり,かける数の十の位となる「2」については,「2×4」や「2×7」によって,計算します.
この展開で出てきた3番目の項,「4×20」について,4×20=4×(10×2)=4×10×2=(4×10)×2=10×4×2=10×(4×2)=10×(2×4)とすると,10が2×4=8個ある,だからこの部分で,筆算の答えのうち80を求めたんだという次第です.2×7は,70×20=…=100×(2×7)です.
なお,上記は,「筆算の部分積で,かけられる数・かける数を交換するのはなぜか」の検討です.74×23の計算は,7×2,7×3,4×2,4×3の九九を使ってもできるじゃないかと言うのであれば,おそらく関連しそうなキーワードは「非標準的な計算法」です*3


[twitter:@jeonjung_tanaka]さんのツイートを1〜2日分,読ませていただいたところ,「かけ算の順序」関連のリツイートがありました.

リンク先は:

画像は:
http://i.imgur.com/KtKNmXG.png
最初の問題は,"1. Use the repeated addition strategy to solve: 5 x 3.(5×3を,たし算で求めなさい)"です.すぐ下に「5×3=_」も印字してあります.下線のところには「15」が手書きされています.すぐ右にある「5+5+5」も,同じ人の解答と思われます.
この答案に対し,赤字で「-1」とついています.間違いだったというわけです.右には「3+3+3+3+3」とありますが,これを先生が書いたか子どもが書いたかは,分かりません.
次の問題は,"2. Draw an array to show and solve: 4 x 6.(4×6になる図をかいて,答えを求めなさい)"で,「4×6=_」の下線には24,そしてアレイは「1」を,6行4列に並べています.
これも赤字で「-1」,そして4行6列のアレイが添えられていました.
Independentの記事は,「pettiness(狭量さ)」がタイトル直下や本文にもあるのが顕著で,この採点を批判する論調となっています.
その一方で,Imgurのコメントを見ると,批判に賛同する中にも,"Please notice that it's about the meaning of the question. Obviously, the meaning of 5x3 is completely different from 3x5.(意味を問う問題なんだ.明らかに,5×3は3×5と全く異なる)"や"It's true that 6x4=4x6=24 imagine a wedding 6 tables with 4 people isn't the same as 4 tables with 6 people, still have 24 guests though.(4人掛けの6テーブルと6人掛けの4つのテーブルは同じではないよ,24人分ではあるけれど)"といったコメントも,入っていました.
「論争」に関しては,「3×5が正解だというが,交換法則があるから5×3も正解だよ」と「交換法則から3×5=5×3となるが,3×5と5×3とで表すものが異なるよ」との対比*4がここでも見られたのか,というのが個人的な思いです.
出題,そして正誤判定はというと,学校でどのように教えているか次第でしょうね.最初のほう(repeated addition,累加)は,米国なら5×3=3+3+3+3+3であり5+5+5ではないと指導するだろうなとも思います.アレイは,縦の数×横の数,あるいは行の数×列の数という教え方をしているのかどうかが気になります.
文章題やアレイについては,当ブログにて英語記事をリリースしてきましたが,今回の論争に答えを出しているかというと,残念ながら,そうとは思えません.ともあれ,リンクを:

最後の記事に対しては,海外で討論がありました(In Japanese primary schools, math problems are really word problems. | NeoGAF).自分の情報収集や取りまとめとは別のところで,同じ月(2013年11月)には台湾で報道があり,動画(http://www.youtube.com/watch?v=vhaOzXSLSyw)が視聴できるほか,中国語や英語によるやりとりも残っています.


上で見てきたテスト問題には,上部に,評価項目らしきものが書かれています."3.OA.1: I can use multiplication strategies to help me multiply.(かけ算を使って,かけ算の答えを求めることができる*5)"と"3.OA.3: I can use the structure of a word problem to help me solve it.(文章題の構造を使って,答えを求めることができる*6)"です.
「OA」やナンバリングから(そして記事にも言及がありましたが),Common Coreを連想します.少し調べたところ,ちょうど該当するものは,Common Core State Standardsのmathematicsにはなく,もっとも近そうなのは3.OA.A.3です.
「3.OA.1」と「3.OA.3」の各事項は,Common Core State Standardsすなわち全米ではなく,州または学校で設けた基準ではないかと推測します.

*1:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_004_1.pdf#page=7

*2:中学3年で習う公式をもとにすると,70×20+70×3+4×20+4×3になると思いますが,項の並びは,筆算の計算の順にしておきました.

*3:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120531/1338411301

*4:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20151014/1444771468

*5:おそらく"multiplication strategies"は"addition strategies"の誤記です.訳は「たし算を使って,かけ算の答えを求めることができる」となります.http://www.corestandards.org/Math/Content/2/OA/の2.OA.C.3と2.OA.C.4が関連してきます.

*6:word problemの冠詞がaで,structureの冠詞がtheとなっているのは,この段階で学習したり解答したりするかけ算の文章題(いろいろある中から,出題された一つ)では,かけられる数とかける数がそれぞれ一意に定まる(式で逆に書いてはいけない)ことを示唆します.ところで,2つの問題にも,定冠詞と不定冠詞が見られます."the repeated addition strategy"とあるので,5×3の累加の表現は一意となるわけで,では"an array"はというと…1個1個の形状は,解答では「1」だったけれど他のにすることもできて,しかし(採点基準として)行数・列数は,4行6列のみ正解で6行4列は不正解,といったところでしょうか.