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チャレンジタッチのかけ算学習

縦長のページです.スクロールエフェクトで出てくる画像に,「3×4かな? 4×3かな?」と考えているシーンが出てきます.
http://sho.benesse.co.jp/s/2/cp/kuku/img/sengen/sec05_ill.png
画像の右には,「クッキーを3個セットで4人にプレゼントしたい」がテキストで現れています.なので式は,3×4が期待されますが,その式でなければならないといった押しつけは,見られません.
ページ末尾の,大きな赤いボタンを押すと,ページが変わります.

赤の塗り潰しが,目に飛び込んできます.
チャレンジが考える,かけ算九九の学習について,1番に挙がっているのは「意味・きまりの理解」です.ですが,その学習教材を通じて,子どもに学んでほしい,かけ算の「意味・きまり」が何であるかは,特に書かれていません.
このページの末尾に,大きな緑と青のボタンが横並びになっています.右側を押すと,またページが変わります.

タブレットを使った学習教材の紹介です.
ページの真ん中あたりに,「チャレンジタッチをWEBで体験」と題して,PCのブラウザからも操作できる絵が出てきます.マウスカーソルに合わせて,タッチペンも表示されます.

スタートのボタンを押して,試してみます.はじめの何枚かは,おはなしです.
ほどなく,インチキおじさん登場です.

帽子には「ひ×い」の文字があります.「ひ」は「1つ分の数」の,「い」は「いくつ分」の,それぞれ頭文字ですね.
次の画面で,かけ算の式を解説しています.

文字では「かけ算の しきは 1つ分の 数が // いくつ分 あるかを あらわしたね」となっています.この文末表現も,見過ごすわけにいきません.というのも,「したね」により(一つ前の「おぼえて いるかな?」も),このベネッセの学習教材では,「かけ算の しきは 1つ分の 数が いくつ分 ある」は,この段階で新たに学習する(知ってもらう)のではなく,学校で学習済みであるのを確認(あるいは追従)していることになります.
その次が,自分で操作して解くことのできる,問題です.

シュークリームが8個,皿が4枚あるという状況で,2×4になるよう,シュークリームを皿の上に置きます.マウスのドラッグ操作で,シュークリームを動かせます.
2個ずつそれぞれの皿に置けばいいのですが,ひねくれてみます.

そして「こたえあわせ」のボタンを押すと…

「ほんとう?」と,新たなキャラが言っています.
2個ずつ,それぞれの皿に置きましょう.

そして「こたえあわせ」のボタンを押すと…

無事,「せいかい!」です.なお,2度連続して間違えると「ざんねん!」と出て,その場合にも次に進みます.
次はクッキーで5×3,そしてマカロンで3×4の式にする問題です.いずれも,色や形状のみならず,式に現れる数も考慮することなく,どの皿にも同じ数ずつ置いてから,「こたえあわせ」のボタンを押せば,正解となります.
その次は,2択問題です.

2×3になるのは,左と右のどちらですか,というもので,右は2+3ですね.かけ算に加えて,たし算の意味も確かめようということですか.
梨を使って同様の問題が出たあと,ネットで論議を呼びそうな,2択問題が出てきました.

2×5になるのは,左と右のどちらですか.左が「せいかい!」,右が「ほんとう?」です.次の問題も,ケーキの配置から6×3の式を選ぶもので,間違いのほうは3×6の式が想像できます.
そこまで問題を終えると,次の画面になります.

「いろいろ あったね〜」とのことですが,どれも,皿に食べ物を置く,または置いてあるという場面ばかりで,単調な流れに感じました.
上に書いたとおり,かけ算は「1つ分の数×いくつ分」の式で表せることを前提としている---教科書や,学習指導要領解説の追従なので,その是非は問わないこととして---のですが,1つの絵に対して,複数の「1つ分の数」が考えられるような場面を,このタブレット教材でも取り扱っているのだろうかというのが,気になってきました.
一例を挙げるなら,『新版 小学校算数 板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 2年下』p.21で描かれている,次の絵です.

タブレット上では,囲い込むのではなく,対象物の上をなぞって,指を離したら,それで1グループとするのがよさそうです.そのようなインタフェースは,技術的に可能なはずですし,電子機器を使うことなく,紙と鉛筆で問題を考える際にも,線を引いて1かたまりを表現するのは,しばしば有用となります.
とはいえそれは,ソフトウエア技術だとか数学的処理に関すること,言ってみれば「大人モード」の検討と言わざるを得ません.実際にそのインタフェースを作ったとして,子どもたちが違和感なく,なぞってグループとみなすような操作ができるかは,要配慮・要実証ですね.


上で「ネットで論議を呼びそうな」と,いわば他人事のように書きましたが,私も当事者の一人であることを自覚しています.ただし学習指導要領・同解説*1や,教科書の内容に賛意を示している点で,多くの発言者とスタンスが異なっています.
今回見てきた出題は,かけ算の順序論争についてで分類したうちB-1,B-2,B-5が関係します.また「1つの場面に1つのかけ算の式」「1つの場面にさまざまな式(や考え方)」が例示されている文書には,http://www.globaledresources.com/resources/assets/042309_Multiplication_v2.pdfが思い浮かびます.

*1:『小学校学習指導要領解説 算数編』の調査は,2011年に試みhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20110406/1302031333 http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20110801/1312149042,その後,Wikipedia:かけ算の順序問題の編集に携わりましたhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131017/1381960209.異なる視点から事例紹介を書いたのは,昨年のことですhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140131/1391118525