昨年11月の記事です.認知特性には大きく3つあって,「言語優位」「視覚優位」「聴覚優位」…
これまで記事にしたことがあるのを思い出しました.ほどなく見つかりまして,次の2件です.
以下は冒頭の記事より前に書かれたものですが,さすが人気ブログの人気記事といった内容でした.
それはさておき,大学で情報教育に携わり,興味本位で算数教育のことを学びながらアウトプットしている者として,へえ,そうなっているんだと思ったのは,記事のイラストの1つです.http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20151029004221_comm.jpgより見ることができました.
最初にこのイラストを見たとき,明治図書あたりの本の表紙かと思ってしまいました.
でも,そうではなさそうです.もしそうだとしたら,「2×3=?」の上に書名が来ることになりますが,良いレイアウトとなりそうに思えません.それと画像の右下に「イラスト・西森 万希子」とありまして,これまた,本の表紙に(本文中のイラストでも)書かれることはありません.といったところから,これは記事本文の「視覚優位の子には、四角のタイルが増えていく図が描かれた九九カードの方が、理解しやすいこともある」を視覚化した,記事のための描き下ろしと判断しました.
イラストの内容を,言葉にしてみます…「2×3」を求めるときの,父・母・子の認知特性が表現されています.右の母親は「「ニサンガロク」でしょ〜!!」と言う(または思う)とともに,口を閉じ,もどかしい表情です.3つの認知特性の中では,聴覚優位が最も関連します.
それに対し父親は,紙の上にタイルを並べて,2×1はこう,2×2はこう,2×3はこうと,タイルの並びと式とを対応づけています.「四角形をイメージして考えてみたら?」という語りかけもあります.
子どもは,父親の方を向いて歯を見せ,「そっか〜(電球)わかった!!」と答えています.2人とも,視覚優位であることをうかがわせます.
算数教育に踏み込んで,父母の言動を読み直すと,また新たなことが見えてきます.
全体としては,2×3=6の求め方,もしくはなぜ2×3が6になるのかについて,「2×3と言えばニサンガロクでしょ(そう覚えてしまいなさい!)」という教え込み(固定観念)に対して,「図にして考えてごらん」という,別の(このケースでは子どもにとって有益な)アプローチを提案する,という見方ができます.
極めて小さな一角にも,焦点を当ててみます.イラスト中のタイルの並びについて,文字で表すと,次のようになっています.
□ □ 2×1
□□ □□ 2×2
□□□ □□□ 2×3
いずれも,縦の数をかけられる数(=2)として固定し,横の数をかける数として1,2,3とすることで,この場面で必要となる,2×3のタイル表現を得ています.
「縦×横」で数量を認識したり整理したりすることが,本文ではなくイラストから,もっと言うならイラストレーターさんの認識にも含まれている*1ように見えて,面白かったのでした.
なお,記事中の「こうした特性は、学校現場ではほとんど考慮されてこなかった」には,疑問を持つ先生もいるのではないかと思いました.いくつかの本を通じて知った,絶賛される算数授業のほか,先日立ち会った授業参観の経験からも,小学校の授業では,言語・視覚・聴覚をすべてフル活用して,「新たに学ぶこと」「思い出す(これまでに学んだ中から適切なものを選んで,目の前の問題に適用する)こと」を行っている---認知特性の1つが低いとしても,他で補える---という認識が,個人的にはあります.
なので今回見てきた記事は,学校の教え方が悪いのだ(不十分だ)という路線ではなく,家庭や塾といった,学校よりも,学ぶ者そして教える者,1人1人の認知特性を知ることのできる学習場面における提案と思うのがよさそうです.
*1:執筆者から,指示があったかもしれませんが.