記事では,「安全性を追求した3段タワー」というのを提案しています.またある雑誌からの画像を貼り付け,一般的な(危険な)3段タワーとの対比を試みています.
提案されているタワーですが*1,てっぺんの人だけが正面を向き,残りの者は左か右を向いているという特徴から,組体操では従来,「やぐら」と呼ばれてきた技のバリエーションと思われます.関連技を,書籍から見ていきます.
まず,人数を5人にした技の完成形は以下のとおり.
このイラストは『子どもも観客も感動する! 「組体操」絶対成功の指導BOOK』p.44のもので,技名は「やぐら」です.そのほか,『DVD付き みんなが輝く組体操の技と指導のコツ (ナツメ社教育書ブックス)』pp.50-51にカラー写真つきで詳しく解説しており,こちらの技名は「5人やぐら」です.
人数を9人にすると,1段高くなります.完成形は以下のとおり.
7人しかいないようにも見えますが,最下段は2人ずつ横並びになっています.このイラストは『8時間でできる!組体操の指導法 (教育技術MOOK よくわかるDVDシリーズ)』p.24のもので,技名は「天空の城」です.そのほか,『DVD付きみんなが輝く組体操の技と指導のコツ』pp.80-83にカラー写真つきで詳しく解説しており,こちらの技名は「9人やぐら」です.
もう1段,高さを増やすと,どうなるでしょうか*2.それもまた,本に載っています.
このイラストは『8時間でできる!組体操の指導法』p.27のもので,技名は「インフィニティー」,人数は21人です.
冒頭のリンク先の技を含め,「やぐら」の特徴となる形状として,てっぺんの人だけが正面を向き,残りの者は左か右を向いていることが指摘できます.それに対し従来型のタワーは「円塔」として区別することができ,wikipedia:人間円塔などから見て分かるとおり,てっぺんの人以外は,中を向くのが一般的です*3.
ところで,「やぐら」を辞書で引くと「tower」と載っていました.円塔型のタワーはcircle towerとし,本日取り上げたきた「やぐら」は,左右に広がっていることからwider towerと呼び分けるのが,良さそうに思っています.
5人,7人,9人のやぐらについて,負荷計算をしてみました.Excelファイルはhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/files/yagura.xlsx?d=downloadよりダウンロードできます.自重は全員1とし,手と足の体重のかけ方は3:7にしているのは,従来試算と同じです.それぞれが,左・右・正面のいずれを向くかの情報も,付与しました.
5人や7人では,てっぺんの人の足を背中に置くことになる,上から2段目の人の負荷(0.5)が最も高くなっています.しかし9人では,最下段が最も高くなります.ちなみに21人の場合の負荷計算を,Rubyで試みておりまして,最下段の中の者が最も高く,荷重は約0.99という値になっています.
(最終更新:2016-03-04 朝)
*1:2段目の演技者間に距離があるのが,気になります.てっぺんの演技者は,登って行く途中で,2段目の一方の背中に足を置くとともに,反対側の手はもう一人の背中をとらえることになりますが,距離があると不格好に見えるのです.
*2:減らすなら,土台が2人で四つんばいになって反対を向き,その背中に3人目の演技者が乗る状態でしょうか.『8時間でできる!組体操の指導法』p.14で「岩」,『子どもも観客も感動する!「組体操」絶対成功の指導BOOK』p.33で「大地」として,それぞれ取り上げられています.
*3:『8時間でできる!組体操の指導法』では,「3段タワー」はp.25,「やぐら」はp.26で紹介されています.いずれも「円塔」の形態です.土台が四つんばいや中腰のときは,外を向きます.