昔話を.私は学生時代(1990年代中ごろ),「2枚連続して,文字だけのスライドを作らない」という目安とともに,研究内容をできるだけ図で表すよう,指導を受けました.
教員になって,プレゼン作成ツールがTeXからPowerPointへと変化し,プレゼンの本を読んだり学会発表を見たり,学生を指導したりしていきながら,どんなときにどんな図で表せばよいかの勘所を学びました.
数年前,産学連携で申請をすることになり,構築するシステムの主要部を,1枚のスライドで表現して送付し,数日後に受け取ったスライドは,まさに「ポンチ絵」でした.残念ながらその申請は落ちました.ともあれ,論文において査読に通るための内容と体裁が必要なのと同様に,ポンチ絵にも,そこで求められる様式美があるのだな,と感じた機会でした.
さて,1枚の絵に様々な情報を詰め込むという「ポンチ絵文化」に,対抗するものはというと…先月見かけて,はてブをし損ねた,アカデミー賞の受賞スピーチが思い浮かびました.検索すると,幸いにも見つかりました.
28日(現地時間)に開催される第88回アカデミー賞授賞式の受賞スピーチだが、今年から画面にテロップが出る形になるという。
アカデミー賞の受賞スピーチ、今年から新しいスタイルに | cinemacafe.net
テロップで表示されるのは受賞者が感謝したい人々の名前。受賞スピーチを45秒以内に収めたい映画芸術科学アカデミー側が考案したもので、候補者たちは事前に謝辞を捧げたい人々の名前を書いて提出することになるそうだ。
この変更については、8日(現地時間)にロサンゼルスで候補者たちが集うランチョンが行なわれた際に発表された。授賞式プロデューサーのデヴィッド・ヒルは「受賞者たちの中には監督や自分の夫や妻、子どもたち、それにペットへの感謝を言い忘れた人たちがたくさんいるんです」と説明した。
(以下略)
これまでの弊害---主催側は真の受賞スピーチを期待するのに対し,受賞者は謝辞で精一杯となってしまう---を改めるよう,今回,変更を試みた,と読むことができます.
ポンチ絵については,どうなるんでしょうかね.今年度,情報処理科目と新入生向けセミナーを通じて,1メッセージ・1スライドを基本に,1枚あるいは一連のスライドを構成することを,指導してきました.
「ポンチ絵」と呼ばれるジャンルの存在と事例を---我々は真似しなくてもよいことと合わせて---,次年度の授業で取り入れられないか,考えてみますか.