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組み体操(サボテン・倒立・肩車)について思うこと

組み体操不要のコメントが多くてびっくりしました.個人的に知っていることを書いておきます.
記事に出てくる「日体大の三宅良輔教授」は,先月刊行された次の雑誌に寄稿しています.

体育科教育 2016年 05 月号 [雑誌]

体育科教育 2016年 05 月号 [雑誌]

「組立体操の安全な組み立て方と解体の仕方」(pp.56-60)です.イラストは,上に人が乗ることを想定した四つん這いの姿勢と,下段4人,上段2人で立つタワーが描かれています.
はてブの中に「内田氏」が見られますが,同誌にこの方の記事もあります(組体操・組立体操リスクの「見える化」活動―ネット空間における議論の成果と今後の展望, pp.18-21).
内田氏が日体大へ行って取材(指導)を受けたというのが,Webで読めます.

このページの途中には,「(安全なサボテンを体験する内田先生と、それを支える荒木先生)」というキャプションとともに,写真が載っています.「荒木先生」は日本体育大学の荒木達雄教授で,この方の解説記事も,「体育科教育」2016年5月号より読むことができます(組体操・組立体操の歴史と教育的価値―濱田靖一の思想に学ぶ, pp.12-17).
ここまで「組み体操」「組体操」「組立体操」という表現が出てきましたが,組体操と組立体操は異なるもの*1,という認識が,組体操問題を追いかける人々の間に入ってきたのは,今年になってからです.内田氏の記事と拙ブログから,1つずつリンクします.

朝日新聞の記事に戻って,イラストになっているのが「サボテン」「倒立」「肩車」と,いずれも2人技なのは,組体操が危険なのは多人数・高段でハイリスクな技ばかりでなく,こういった2人で行う演技にも,ケガが多発しているのを背景としています.個人的には,安全対策がイラスト化され,新聞記事として読めるのは参考になる一方で,手元の(専門家でない自分でも容易に入手可能な)本をめくれば,書かれてある話ばかりなので,新たな知見を得たという認識はあまりありません.「サボテン」「補助倒立」「肩車」の指導法は,以下の本が詳しいです*2

DVD付き みんなが輝く組体操の技と指導のコツ (ナツメ社教育書ブックス)

DVD付き みんなが輝く組体操の技と指導のコツ (ナツメ社教育書ブックス)

2人技や少人数技の指導を通じて,安全で見栄えのする組体操・組立体操を確立していこうという動きには,賛同しますが,そういった活動では今のところ,(1)運動会の演技として(数十人〜100人以上が同時に動きながら)組体操を行う際の注意点が整理されていない,(2)クイックピラミッドのようなポピュラーな技への言及がない,といった点で,学校現場でなされている指導や運動会準備に,遅れをとっているように感じています.(1)について,TOSSに抵抗がなければ『組体操指導のすべて―てんこ盛り事典』が読みやすいです.(2)については,拙ブログで取りまとめた組体操の技「クイックピラミッド」についてが参考になればと思います.


組体操の荷重計算をエクセルで - リンク集を更新し,そこから当記事にもリンクしました.自分も「体育科教育」に記事を載せていただいています.本記事作成の意図は「体育科教育」の販促ではなく,組体操問題に関する最近の動きの個人的な整理にあります.

*1:「組み体操」は,個人的に持っている本にも見かけますが,どちらかというと新聞などの報道でよく見かける表現だと思います.

*2:補助倒立について,横から受けるというのは,同書p.25の下段に,「正面で倒立を補助できない場合」の指導法として書かれています.