わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

問題文の数,マイナス×マイナス

分数のわり算。わり算はわる計算ではなく、1あたりを求める計算から始まった件は,問題文の数を使って式を作ることで修正をしており,一件落着です.
マイナスかけるマイナスはなぜプラス( 正の数、負の数のかけ算)のコメントで,ケーキが3分の1個で100gがリンクされていました.いくらか情報を追加しておくと,平成24年度全国学力テスト小学校算数A大問8(犬を飼っているのは8人で,学級全体の25%です.学級全体は何人ですか)を,当ブログで最初に取り上げたのは第3用法で,次は赤いテープと白いテープの文字式です.
後者ではhttps://twitter.com/sekibunnteisuu/status/636388254221078528にリンクしています.このツイートでは,ただ一つの式だけが正解とされるのだと,主張しているように見えますが,犬の問題は,わり算の式もかけ算の式も,◎の正答となっていますので,こちらでは「反例」と書いたのでした.
テストや評価から離れると,1つの場面に対し,複数の式そして考え方が,1990年代あたりからの教科書に書かれていると思われます.当時の教科書は,持ち合わせていませんが,英訳された内容を,http://www.globaledresources.com/resources/assets/042309_Multiplication_v2.pdf#page=18とその次のページで,見ることができます.直接,自分が見たのは,当時小1の我が子の授業参観でした(13個の求め方).
ところで,犬の問題は,https://twitter.com/sekibunnteisuu/status/732060446673375236でツイートされています.個人的には「8÷0.25」で求めるほうが,割合をよく理解している*1と考えます.「8×4」の式については,割合が直接,出て来ないかわりに,「数量の関係を適切にとらえて式にしている」と評したいところです.


マイナスかけるマイナスはなぜプラス( 正の数、負の数のかけ算)の本文ですが,マイナス×マイナスがなぜプラスになるのかについて,その説明の仕方が,分類・整理されていると良いなと感じました.
当ブログを見直してみると,以下のパターンが見つかります.

  • 離散量の時間的変化で説明する.
  • 「速さ×時間=道のり」の式をもとに,速さと時間をマイナスにする.
  • 代数的に証明する.

このうち,「離散量の時間的変化」は,負の数のかけ算に書いたものをリライトしてみます…
何個でも食べられる,おいしい料理を用意しましょう.
私がそれを1分間に3個,食べるとすると,2分間では3×2=6で6個,食べることになります.もっと食べたいけれど,そこでストップします.
私ではなく,この料理の個数に着目すると,1分間で3個,少なくなっています.これを「1分間で-3個,多くなった」と読み替えれば,2分間では(-3)×2=-6で,-6個多い(6個少ない)と言うことができます.
次に,それだけ食べた時点を基準としたとき,その2分前には,食べ物は6個,多いわけです.なぜなら3×2=6だからです.
マイナスの数の意味に注意すると,食べた時点と比べて,食べ始める前は何個,多かったかを表すためのかけ算の式は,(-3)×(-2)と表すこともできます.したがって,(-3)×(-2)=6を得ることができました.
なお,3と2は,「1分間に何個食べるか」と「何分食べるか」に対応しており,私の食欲の限界を考慮しなければ,任意の正整数に割り当てることができます.そうすると,任意の整数において,マイナスの数にマイナスの数をかけると,プラスになることが説明できます.
次に,速さや数直線を使うアプローチは,負の数のかけ算のほか,平成28年度数学教科書を見る〜「正の数と負の数」を中心にでも取り上げています.速さを使うことで,小学校の算数と中学校の数学との連携が図れますし,小数・分数であっても,マイナス×マイナスはプラスとなることが説明しやすくなります.といった事情もあり,中学1年の教科書で採用されていると想像します.
なお,「マイナス×マイナスはプラスとなる」というだけであれば,速さも比例関係も不要で,上述の食べ物でもいいですし,累加の性質(乗数が1増減すれば,積は被乗数の分だけ増減する)を活用することでも得られます.数直線上の任意の点を対象とした演算となると,実数ですので,デデキントの切断のような,中学数学を超えた道具立てが必要となります.
代数的な証明については,簡潔に触れておきます.なぜ-1と-1をかけると+1になるのか [物理のかぎしっぽ]が読みやすいです.当ブログではhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20150506/1430864590でリンクし,あれこれ書きました.


「かけ算の順序」の調査を通じて得た,最も大きな知見は,「自分がちょっと考えて,思いついたことは,たいてい,誰かが書いている」ことだと思っています.
海外の算数教育や授業でも,a+bとb+a,a×bとb×aの対比が試みられており,答えは同じでも意味が違うことを重視しているのは,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20151121/1448031600で整理してきたとおりです.

*1:解説資料および報告に書かれている「ここでは,百分率の意味に基づいて,基準量の求め方が(比較量)÷(割合)になることを理解していることが求められる」に合致します.