わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

引っぱれ!

いきなりですが問題です.

ほとんど同じ強さの力を出せる2人の力持ちが,1本のロープの両端をもって綱引きをしたら,2人がそれぞれ力いっぱいに引いたとき,ロープが切れました.
では,その同じロープの片端を大木に結びつけ,もう一方の端を人が引っぱってロープを切るためには,2人と同程度の力持ちが何人必要でしょうか.

元ネタは,以下の本のp.149(問58)です.

[isbn:4334002528:detail]

イラストが味わい深いです.力持ちと言えばレスラー,ですね昔は.

プロローグの前のページによると,「本文さし絵・水野良太郎」とあります.人物名で検索すると,Wikipediaエントリや公式サイトが見つかりました.「頭の体操」のイラストも,手がけられていたとのこと.
といったところで解答です.「2人」,と言いたいところですが,正解は「1人」です.大木に結びつけて引っぱるというシチュエーションでは,大木が,2人のもう一方と同じように,ロープを引っ張っているからです*1
「やってみないと,そうなるかどうか,分からないじゃないか」という反論に対しては,ロープを力いっぱい引っぱって切ろうとする代わりに,重りを使って,バネの伸びを見るという授業が,これまでなされてきました.最近,以下の本を読みました.

[isbn:4130020617:detail]

「IV 授業で子どもの信念を変えることは可能か―仮説実験授業の場合―」の中で,他書(([isbn:4773500034], p.152.この本は手元になく,Googleブックスなどでも,該当箇所を見つけることができませんでした.))からの問題文(図あり)をp.174に載せています.こちらは本記事で画像を置くのではなく,問題文が載っている文献とブログ記事へリンクすることにします.

後者では,画像の直前に「「ばねと力」の常識的直観が敗北する最初の実験問題をみよう」と記されています.ただ,Bの図は,重りが上向きになっています.別の言い方をすると,180度ひっくり返った図となっています.
ともあれ,レスラーの綱引きにせよ,バネと滑車と重りにせよ,両方から引っぱる図と,一方を固定して引っぱる図とを比較することで,どのように力が働きバネが伸びるのかが,検討しやすくなっています.


引っぱる話と別に,教育に携わる者として驚かずにいられなかった記述を取り上げます.
『すぐれた授業とはなにか』では,「IV」の章の提案者の藤岡信勝氏が,仮説実験授業を熟知した方が実施した小学校6年生の授業を参観しており,ビデオをもとに,児童らによる重要な意見を取り上げながら,はじめの予想(アイウの選択肢がそれぞれ何人か)と,討論後すなわち実際にやってみる直前の予想とを表にしており,子どもたちの変化を整理しています.問題点を提示したのち,p.197より,著者4人による討論が繰り広げられます.
子どもたちの討論を見ても,当時助教授の4人のやりとりにしても,自分にはここまで踏み込んだ意見が出せないなあと思いつつ,読み進めると,章の最後(p.218)には〈追記〉として「この報告ならびに討論については、授業者尾形邦子氏からの要望にもとづき、次の点を明記いたします。この討論は、仮説実験授業の研究者及び、仮説実験授業を実施している教師を交えることなく行われたものであり、したがって、その場でそれらの人々に解説・補足・反論の機会がない状態でなされたものです。」と書かれていました.
大阪弁で手短に言うなら,「いっちょかみはアカンでぇ」でしょうか.

*1:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111029/1319835106より:引っ張る,というと,中学1年のときの理科の記憶がよみがえってきます.バネの伸びの問題で,バネは水平方向に伸びるようにしておき,両端に100gのおもりをつけた場合と,一方の端を壁に固定した場合とで,伸びは同じになるというものです.抗力のおかげで,壁に固定した場合にも,100gのおもりが引っ張るのと同じ力が働く,だったかな.何が印象強かったかというと,その出題は自習課題で,ヘルプに来た先生が私の解答を見て「違うよ」とおっしゃったこと,そしてその先生は柔道部の顧問な上に,ふだんは数学を教えている先生だったことです.