その1
「すえの子よ…」
「……」
「保育所,楽しいか?」
「うん」
「そっか,よかった」
「さんにんになっていくし」
「三人…になる?」
「そやで.さきのこちゃんとぉ,あとのこちゃんとぉ」
「…あたし,か?」
「うん」
「なるほど.けどそう言うときは『3人で行く』やな」
「……」
「『3人になって』て言うたら,お前が3人になるみたいやないか」
「ちゃうでぇ」
「すえの子と,すえの子と,すえの子の,3人で保育所に行くねん」
「なんでや!」
「お前が3人おったら,ちょっとすごいなあ」
「……」
「パパが3人っちゅうのも変やな」
「パパ,パパ,パパ!」
「反応早ぁ」
その2
夕食後 → パパは自分の部屋へ行き → 20分ほどしてから → 水を飲みに食卓へ → 自分の座席まわりに → ひんやり感 → じゅうたんを見ると → ごはん粒 → 誰か落としおったな → 1粒から → まとまったのまで → ごはん粒が散らばっている → 掃除機で取るのは → 難しそう → 雑巾も → 落とした子を特定して → 取らせるか → いや → 口に入れてしまうかも → パパが拾うか → 四つんばいになり → じゅうたんをじっくり見ながら → ここに1粒 → ここにまとまり → 右手の指でつまんで → 左手の手のひらに → そうこうして → あと少しというところで → 腰元に違和感 → ひんやり感 → 首を向けると → 後ろに,すえの子 → 露出したパパの素肌を → つんつんしていた → パパは → くるんと回って尻もちをつき → お前なにしとんねん → 大声だったこともあり → 隣の部屋の → さきの子とあとの子が見に来た → すえの子が → 大笑い → さきの子とあとの子も → 大笑い → こらこら → 3人で笑うな