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『現代暗号のしくみ』を読みながら,4月からの授業のことを考えてみる

生協で,購入しました.本文120ページにも満たないながら,暗号の理論や応用について,はじめに知っておくべきことが簡潔にまとめられています.
かといって,予備知識なしですらすら読める本でもありません.たとえば,ワンタイムパッドの安全性(pp.15-18)を理解するには,条件付き確率の概念が前提となっており,そこに,ある事象が等確率で発生することや,鍵と平文とが独立しているといった,そこの議論に限定された性質とを,組み合わせることになります*1
たとえば,自分の授業で式を1つ1つ見ていきながら,その理路を学生に伝えるのも,可能ではありますが,数学的なナニと,今回の話におけるコレとを結びつけて論証(されたものをきちんと理解)する能力は,学生が本を読みながら,培ってもらいたいなと,この数ページを読んで思ったものです.
副題にある「高機能暗号」に関して,何種類かの「〜暗号」が紹介されていますが,その中でも知っておきたいのは「検索可能暗号」(7.3節,pp.94-98)です.図示されたモデルが一目で分かるものとなっており,暗号化されたままでもなぜキーワード検索ができるのかについて,双線型写像を用いた数理的なところも,しっかり解説されています.
と,読み終えたところで,次年度前期の担当科目,「情報セキュリティ」改め「ネットワークセキュリティ」で,この本をどのように扱おうか迷います.参考書としてシラバスに入れるには,この本でも参考文献に挙げられている,結城浩『暗号技術入門』との重なりが大きいのです.
PowerPointの授業は次年度も継続する予定なので,いくつかのスライド末尾に,書名と該当ページを書くのがいいのかな….

*1:学部生のころに読み,のちに指導教官となる教授が書かれた,符号理論の本に,ここまでは線形代数で純粋に数学的な内容,そしてここからが符号理論ならではの議論,と記されていたのを思い出します.