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考察・検討・考慮・考案の使い分け

「研究ミーティングの議事録を見ました.3箇所,『考察する』と書かれていますが,『検討する』または『考慮する』に書き換えてください.
というのも,研究において『考察』と書くと,単に考えるのとは異なる意味になるのです.例えば,実験をしたあとにその意義などを考えて,文章にするのが『考察』です.実験科目のほか,プログラミングの演習課題で『考察』を書いてきたかもしれませんが,それも,ひととおり動作してからだったはずです.卒業論文でも『考察』の節は,評価実験のあとに置きます.
まだ結果が出ていない状況で『考える』ことになるので,『検討』または『考慮』にしましょう.『考案』をする段階でもないと思います」

使い分け

  • 考察:実験をはじめ,実施したことの意義などを,その目的や,先行研究などと結びつけながら「考えて」文章にすること.論文(卒業論文・学会発表)に取り入れることを想定して書く.対応する英単語はdiscussion.
  • 検討:「考える」を熟語*1で表したもの.研究では,検討したけれども,良い成果が得られなかったとしてもかまわない,というニュアンスを含む.英語にするならthink(ing) of.掘り下げて考えるという意味ではdeepening(深化)という語もある.
  • 考慮:すでにあるもの(先行研究やコンテンツ,その分野の常識など)を意識して,これからどうするかを「考える」こと.「アルゴリズムを考慮する」と書いたら,既存のアルゴリズムがあることが前提となる.「配慮」も同義語*2.英語はconsiderationで,take 〜 into considerationもよく使われる.
  • 考案:知恵をしぼって「考えて」,形にすること.ハードウェア(モノ)に限らず,ソフトウェアや,実行のための枠組みなどでもよい.「アルゴリズムを考案する」と書いたら,自分でアルゴリズムを作る(入力・出力・処理のステップなどを言葉で表す)ことを意味する*3.英語はinvention.

「考察」について,いい文献ある?

「かけ算の順序」に抵抗がなければ,以下の文献に書かれた「総合考察」がおすすめです.

(最終更新:2018-04-05)

*1:サ変名詞は動詞にも名詞にも使えるので,体言止めにしやすい(議事録にも有用).それと,「考え」と書いたら,「これから考えること」ではなく,「これまで考えたこと」と解釈されやすい.

*2:ただし「〜を考慮して」「〜に配慮して」と,直前の助詞が異なる.

*3:何かしらの新しさが伴うことも要求される.例えば,一応うまくいった手続きを,アルゴリズムとして表現する行為は,「アルゴリズム化」であり,アルゴリズムの「考案」とは言わない.