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オセロゲームの終局状態で,強さの比較ができる?

いきなりですが問題です.6×6盤オセロで,ゆうかさんが白で最終的に以下のようになりました(●が黒,○が白.以下同じ).

●○●○○●
●●○●○●
○●○○○●
○○●●○●
○○●○○○
○○○●●○

あすかさんも白で,最終的に以下のようになりました.

○○●○●○
●○○○●○
●●○○●○
○○○●○●
○●○●○○
●●○○●○

強いのは,どっちでしょうか.
さっそくですが解答…も何も,異なる2つのゲームの最終状態だけを見て,強弱なんてつけられるものではありません.
「白の石の数が多いのは,どっちでしょうか」なら,ゆうかさんが21,あすかさんは22で,多いのはあすかさんと言えるのですが.
元ネタです.「崎」の字は実際にはいわゆる「立つ崎」です.

算数授業研究 Vol. 113

算数授業研究 Vol. 113

出だしが興味深かったので書き出します.

➊ 日常事象から問題を設定
藤井聡太4段*1の登場で将棋ブームであるが,子どもにとってはオセロゲームの方が身近である.そこで,このオセロを素材として,割合問題を子どもたちに投げかけた.
右下の2枚のオセロ盤を提示し,「ゆうかさんもあすかさんも白です.強いのはどっち」と投げかけた.子どもたちは,白のコマを数える.ゆうか21枚,あすか22枚であすかが強いことが分かる.白のコマを数値化することで,強さの比較ができる.数値化する気付きを価値づける.

「割合問題」とはどういうことかというと,この引用のあとでは,7×7と4×4の終局状態を比較しているのです.ゆうかさんは7×7の盤でで白石が27,あすかさんは4×4で白石が9です.もちろん,27>9でゆうかさんが強い,と言うわけにはいきません.盤面ごとの,すべての石に対して,自分(ゆうかさん,あすかさん)がどれだけ置けたかを,割合で表すと,それぞれ,\frac{27}{49}\frac{9}{16}となり,それぞれ小数*2にすれば0.5510<0.5625ということで,9石獲得のあすかさんのほうが「強い」,という結論になりました.
ちょっと待って待って…7×7のオセロ盤なんて,聞いたことがないんですが.もちろん8×8の,1行1列分を使わないことにすれば,ゲームはできます.ですが初期配置は一体,どうなるのでしょうか.
この本から離れて,8×8以外のオセロについて,調べてみると,一つ文献が見つかりました*3

これより前には,1993年,6×6盤オセロでは後手必勝であり,そのパーフェクトプレイというのが発見されているとのことです.また4×4盤オセロでは後手必勝,4×6盤オセロでは先手必勝であることが,2007年の宮崎大学卒業論文になっているとしています.そしてこの報告では,4×6盤,4×8盤,4×10盤,6×6盤オセロの完全解析を行い,最終ページで,先手必勝になるかどうかの予想を,以下のとおり立てています.

m,nが整数で,m,n≧2のとき,オセロにおける盤の大きさを2m×2nとする.このときm,nに対して,

  • m≠n
  • m=nかつm,n≧5

のどちらか一方を満たす盤は,先手必勝になる.

これはこれで興味深いのですが,7×7盤は出てきませんし,6×6盤オセロのパーフェクトプレイ「黒16白20」というのも,白がどれだけ強いかではなく,黒すなわち先手がどのような置き方をしても,白が最善を尽くせば,最終状態で黒はたかだか16しか置けないということだと考えられます.
最後に,「6×6盤オセロ」が売られているのか,Amazonで調べてみました.asin:B0053E2DBWは「この商品は現在お取り扱いできません。」と出ました.asin:B011KT54M8は購入できそうです.

*1:算用数字は原文ママ

*2:原文では,通分して比較を行っています.

*3:情報処理学会ということで,https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/で検索したものの,ヒットしませんでした.またCiNii Articlesではhttp://ci.nii.ac.jp/naid/120005652984を見つけましたが,機関リポジトリにはアクセスできませんでした.