いきなりですが問題です.6×6盤オセロで,ゆうかさんが白で最終的に以下のようになりました(●が黒,○が白.以下同じ).
●○●○○● ●●○●○● ○●○○○● ○○●●○● ○○●○○○ ○○○●●○
あすかさんも白で,最終的に以下のようになりました.
○○●○●○ ●○○○●○ ●●○○●○ ○○○●○● ○●○●○○ ●●○○●○
強いのは,どっちでしょうか.
さっそくですが解答…も何も,異なる2つのゲームの最終状態だけを見て,強弱なんてつけられるものではありません.
「白の石の数が多いのは,どっちでしょうか」なら,ゆうかさんが21,あすかさんは22で,多いのはあすかさんと言えるのですが.
元ネタです.「崎」の字は実際にはいわゆる「立つ崎」です.
- 尾崎正彦: オセロゲームから割合の見方を引き出す, 算数授業研究 Vol.113, 東洋館出版社, p.30 (2017). https://www.amazon.co.jp/dp/4491034257
- 作者: 筑波大学附属小学校算数研究部
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 2017/11/06
- メディア: 単行本
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➊ 日常事象から問題を設定
藤井聡太4段*1の登場で将棋ブームであるが,子どもにとってはオセロゲームの方が身近である.そこで,このオセロを素材として,割合問題を子どもたちに投げかけた.
右下の2枚のオセロ盤を提示し,「ゆうかさんもあすかさんも白です.強いのはどっち」と投げかけた.子どもたちは,白のコマを数える.ゆうか21枚,あすか22枚であすかが強いことが分かる.白のコマを数値化することで,強さの比較ができる.数値化する気付きを価値づける.
「割合問題」とはどういうことかというと,この引用のあとでは,7×7と4×4の終局状態を比較しているのです.ゆうかさんは7×7の盤でで白石が27,あすかさんは4×4で白石が9です.もちろん,27>9でゆうかさんが強い,と言うわけにはいきません.盤面ごとの,すべての石に対して,自分(ゆうかさん,あすかさん)がどれだけ置けたかを,割合で表すと,それぞれ,ととなり,それぞれ小数*2にすれば0.5510<0.5625ということで,9石獲得のあすかさんのほうが「強い」,という結論になりました.
ちょっと待って待って…7×7のオセロ盤なんて,聞いたことがないんですが.もちろん8×8の,1行1列分を使わないことにすれば,ゲームはできます.ですが初期配置は一体,どうなるのでしょうか.
この本から離れて,8×8以外のオセロについて,調べてみると,一つ文献が見つかりました*3.
- 竹下祐輝, 池田諭, 坂本眞人, 伊藤隆夫: 縮小盤オセロにおける完全解析, 情報処理学会研究報告 (2015). https://www.ipsj-kyushu.jp/page/ronbun/hinokuni/1004/1A/1A-2.pdf
これより前には,1993年,6×6盤オセロでは後手必勝であり,そのパーフェクトプレイというのが発見されているとのことです.また4×4盤オセロでは後手必勝,4×6盤オセロでは先手必勝であることが,2007年の宮崎大学の卒業論文になっているとしています.そしてこの報告では,4×6盤,4×8盤,4×10盤,6×6盤オセロの完全解析を行い,最終ページで,先手必勝になるかどうかの予想を,以下のとおり立てています.
m,nが整数で,m,n≧2のとき,オセロにおける盤の大きさを2m×2nとする.このときm,nに対して,
- m≠n
- m=nかつm,n≧5
のどちらか一方を満たす盤は,先手必勝になる.
これはこれで興味深いのですが,7×7盤は出てきませんし,6×6盤オセロのパーフェクトプレイ「黒16白20」というのも,白がどれだけ強いかではなく,黒すなわち先手がどのような置き方をしても,白が最善を尽くせば,最終状態で黒はたかだか16しか置けないということだと考えられます.
最後に,「6×6盤オセロ」が売られているのか,Amazonで調べてみました.asin:B0053E2DBWは「この商品は現在お取り扱いできません。」と出ました.asin:B011KT54M8は購入できそうです.
*2:原文では,通分して比較を行っています.
*3:情報処理学会ということで,https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/で検索したものの,ヒットしませんでした.またCiNii Articlesではhttp://ci.nii.ac.jp/naid/120005652984を見つけましたが,機関リポジトリにはアクセスできませんでした.