わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

紀要2つ読み直し

 2つの文献(紀要論文)を紹介し,感想というよりは,読んで気になったところを書いていきます.本論に対する疑義ではなく,本論に至る前の書かれ方に対し,「あれ?」と思ったのでした。

沖原ら(1994)

 出版年について,PDFのヘッダ部には「1993」と表示されますが,出版年月日が「1994-03-10」となっているため「1994」としました.
 「はじめに」(pp.131-132)では,8段の人間ピラミッドの事故に関する訴訟について,平成5年5月11日付の新聞記事を取り上げています.
 しかしながら,「I. 研究方法」以降にはピラミッドは出現しません.「東淀工業高校生徒空中回転死亡事件」の判決文の抜粋が,論文の中心を占めています.
 2つの裁判を,この文献がどのようにしてつないでいるのかは,p.132右カラム,具体的には「この(引用者注:原告側と被告側の間の)認識のずれが前述の社会的問題であると位置付けて,本研究をすすめていく。」と「認識のずれについて裁判ではどのような観点や基準・方法で判断がなされているのかを考察することが目的である。従って,それらについての明確な判断基準や善悪の結果を法学,教育学の立場から考察することは目的ではない。」あたりからうかがい知ることができます.
 「はじめに」で,段落を分けていないことにも驚きました.実際にはp.132の左カラムに,改段落がなされているものの,よく読めむと新聞記事(p.131左「<体育祭の」からp.131左「今後の対応を考えたい。>」まで)の中の改段落なのでした.推測ですが,このピラミッドの裁判も,空中回転死亡事件と同等に取り上げるよう,文章を書いていたけれど,いわゆる紙面の都合,または何らかの事情で,空中回転を中心とすることになり,ピラミッド事例は最初の2ページに押し込まれたように思われます.
 ところでp.134では,判決文の一部として「(2) 文部省発行の指導要額にも本件回転運動は標準的指導種目として掲記せられていない。」を取り出しています.『教育という病』の「組体操は学習指導要領に記載がない」を連想させます.

西山(2019)

 以前にも読んでいたのですが,今回,気になったのは,要旨の中の「「3段騎馬」は「最下段起立ピラミッド」「肩上ピラミッド」「移動ピラミッド」などの名前で呼ばれているが,非常に危険な技であるので全国の小中学校では実施例はほとんどない。」の文です.
 「最下段起立ピラミッド」「肩上ピラミッド」を,本文で見つけられませんでした.要旨にあって本文にない情報というのは,違和感があります.
 これらの語句をGoogleに問い合わせてみました.「最下段起立ピラミッド」でヒットしたのは,wikipedia:人間ピラミッドのほかは,今回の著者によるコンテンツのみでした.
 「肩上ピラミッド」についてはhttp://cms.nerima-tky.ed.jp/weblog/index.php?id=205&type=1&column_id=82433&category_id=6295&date=20160529を見つけました.練馬区立開進第一中学校の「動く肩上ピラミッド」です.段数は4段です.
 「最下段起立ピラミッド」「肩上ピラミッド」の名称・事例を,本文にも,参考文献・参考資料にも,書かなかったのは,著者の選択ということになります.ここも個人的推測を入れてみると,ウィキペディアを出典とすることに対する心理的な抵抗があったのかもしれません.
 出典を意識して,読み直すと,p.133のカッコ書きの「批判をあびている[2]」の文献はこの著者によるものであり,http://yutaka-nishiyama.sakura.ne.jp/math/kumi2016oct.pdfにもアクセスしましたが,他の人もしくは文献による,「批判」は,見つけられませんでした*1ので,批判を既成事実化しようとしているように見えます.それとp.3の「「3段騎馬」と呼ばれる移動ピラミッドは危険な技として知られている。」について,他文献を挙げないのであれば,「ここまで,「3段騎馬」と呼ばれる移動ピラミッドは危険な技であることを見てきた。」とする---もちろん訂正は望めませんので,読む側がこのように読み替える---ほうが,小括として無難であるようにも感じました.

*1:組体操を指導してきた者による,批判に対し「安全な技に変更した」という話を,『組体操指導のすべて―てんこ盛り事典』のあとがきで読むことができます.