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√n分の1の長さの線を描く

いきなりですが問題です.

定規とコンパスがあり,正三角形と正整数nが与えられたとき,その内部に線を引いて小さな正三角形をつくり,その面積は,もとの正三角形のn分の1となるような,作図の手順を答えなさい.

以下,\sqrt{x}は√xで表します.必要に応じてカッコを使用し,範囲を明確にします.x^2はx^2と表記します.
作図の前に検討です.面積比が1:(n分の1)ということは,相似比すなわち辺の長さの比は,1:(√n分の1)となります.
そこで次の問題にします.

定規とコンパスがあり,線分と正整数nが与えられたとき,その内部に点をとり,線分の一つの端点と,とった点とを結んでできる線分の長さが,もとの線分の√n分の1となるような,作図の手順を答えなさい.

上記で「√n分の1」が「√n倍」だったら,中学の知識で作図が可能であり,三平方の定理をもとに,なぜ「√n倍」になるのかを説明できます.
√n倍を得るための,作図の手順は次のとおりです.まず与えられた線分を一辺とする,正方形を描きます.線分を伸ばして直線にしてから,その直線と垂直に交わり,線分の一つの端点を通る直線を引きます.次にその交点を中心とし,与えられた線分の長さを半径として円を描くと,垂線として引いた直線とは,交点が2つでき,どちらか1点を選びます.これが正方形の3つめの頂点です.最後の頂点は,3つめの頂点を中心として,先ほどと同じ半径の円を描き,直交しない方の,線分の端点を中心として,同じ半径の円を描いたときの,交点(与えられた線分上にない交点は,1つだけです)となります.
垂線の交点と,最後に得た頂点とを結ぶと,正方形の対角線となり,その長さは,もとの線分の√2倍となります.
ここから√3倍,√4倍,...,√n倍の長さの線分を得るには,ここまでの作図の中で,与えられた線分を直線にしたものと,正方形において与えられた線分と向かい合う辺を直線にしたもの,これら2本の平行線を用います(2本の直線の距離は,与えられた線分の長さと等しくなります).先ほど得た,√2倍の長さの線分は,2本の平行線の両方に交差していますが,その交点の1点を中心,その線分の長さを半径として円を描くと,中心を通る直線との交点は2つあり,どちらか1点を選びます.その点を通る(両方の平行線の)垂線を引き,他方の平行線との交点を求め,その点と,円を描いた際の中心とを結べば,長さは√((√2)^2+1^2)=√3となります.
一般化するとこうです.√k倍の長さの線分を,2本の平行線の両方に交差する形で描いてあったとき,その交点の1点を中心,その線分の長さを半径として円を描くと,中心を通る直線との交点は2つあり,どちらか1点を選びます.その点を通る(両方の平行線の)垂線を引き,他方の平行線との交点を求め,その点と,円を描いた際の中心とを結べば,長さは√((√k)^2+1^2)=√(k+1)となります.
原理的には,この繰り返しで,√n倍の長さの線分が求められます.ただしnの値によっては,作図の手間を減らすことも可能で,例えばn=17だったら,√2,√3,...とやるよりは,与えられた長さの2倍,そして4倍の線分を作り,上と同様に,与えられた線分の長さを距離とする平行線を引けば,√(4^2+1^2)=√17の長さの線分を得ることができます.
ここまでの結果をもとに,長さがもとの線分の√n分の1となるための作図を考えます.
そろそろ面倒になってきたので,点に名前をつけておきます.与えられた(長さの)線分をABとし,与えられた線分と別に,適当な長さの線分をとってPQとし,その√n倍の長さの線分はPRとして作図しておきます.PQ:PR=1:√nであり,PR:PQ=1:(√n分の1)となります.
次のステップに行く前に,特定の条件を満たすものを見つけてショートカットしておきます.AB=PRにもし,なっていたら(コンパスで測りとれば,判定できます),線分ABに対し長さがその√n分の1になっているのは線分PQでおしまいです.以下,AB=PRでない場合の手順を書きます.
1本,直線ABの平行線を引き(直線間の距離は,ABと等しくても,そうでなくてもかまいません),直線lとします.直線l上に適当に1点をとりP'とします.直線l上で,P'R'=PRとなるような点R'(2点ありますが一方を選びます)をとります.線分P'R'の内部に,P'Q'=PQを満たす点Q'(これは1点だけです)をとります.
AB≠PR=P'R'で四角形AP'R'Bが平行四辺形にはならず,その一方で四角形AP'R'BはAB‖P'R'の台形ですので,直線AP'と直線BR'は平行ではありません.この2直線の交点をOとします.そして直線OQ'と直線ABとの交点を,Cとします.
そうすると,AB:AC=1:(√n分の1)です.というのも,△OAB∽△OP'R'および△OAC∽△OP'Q'が成り立ち,前者の相似からOA:OP'=AB:P'R',後者の相似からOA:OP'=AC:P'Q'が言え,AB:P'R'=AC:P'Q'となります.これは,AB:AC=P'R':P'Q'と表すことができます.P'R':P'Q'=PR:PQ=1:(√n分の1)ですので,線分ABの長さと1とするとき,線分ACの長さは,その√n分の1となるという次第です.
上のほうに,「√n倍」だったら,中学の知識で作図が可能,説明も可能と書きましたが,実は「√n分の1」も,作図可能・説明可能でした.比の中に根号が入るのは,教科書に直接,記載がないかもしれませんが,3つの角の大きさが30°,60°,90°の直角三角形の辺の比は,1:2:√3として,活用されてきたわけです.
図は暇なときに(定規とコンパスではなくSVGで)作成します.