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四面体,円々...

数学教育研究の地平

数学教育研究の地平

 ハードカバーの本です.目次(と編集後記)によると,はじめの3つの章に19の寄稿論文があり,第4章は編者の恩師・平林一榮氏の遺稿とのことです.編集後記(p.347)は「本書は編者の退官記念論文集として出版している。すでに修飾矛盾をはらんでいる。退官を祝される側が編者にはなりえない。しかし(以下略)」という驚きの文章から始まっています*1
 まだぱらぱらと目を通しただけなのですが,「似たものを,見たことがある!」と思わずにいわれなかった図を,2つ,見かけました.
 一つは「授業の4面体モデル」と称するもので,p.72の上部にあります.4つの頂点は「O:目標」「T:教師」「S:児童・生徒」「M:教材(数学)」です.

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 連想するのは,「料理の四面体」です.

モデルの例~料理の四面体,組体操の負荷算出

 今回の本の「(岩崎,2008,p.13)」について,引用・参考文献によると,『学校教育』のNo.1096です.検索すると月間教育誌『学校教育』についてを見つけました*2.バックナンバーは,https://www.fujisan.co.jp/product/455/b/list/を見たところ,2010年から2013年までのみで,No.1096を得ることはできませんでした.
 次に興味を持ったのは,p.120の上部,「超越的再帰モデル」です.

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 1点で接する,大きさの異なる8つの円の円が描かれていて,包含関係をなしています.それぞれに書かれた英語について,日本語訳がpp.119-121に載っていたので取り出します.

  • 第1水準:初源的認識(Primitive Knowing)
  • 第2水準:イメージづくり(Image Making)
  • 第3水準:イメージ所有(Image Having)
  • 第4水準:性質認知(Property Noticing)
  • 第5水準:形式化(Formalising)
  • 第6水準:観察(Observing)
  • 第7水準:構造化(Structuring)
  • 第8水準:発明化(Inventising)

 ただしこの図はこのページ限りです.読み進めると,p.125とp.129に類似した図がありますが,すべて日本語で,円の数も少なく,初源的認識から形式化までです.事項を書き加えているほか,それぞれの図のブロック矢印は,初源的認識からスタートして外に伸び,しかし内側に戻るという向きも見られます.行きつ戻りつしながら,最後の矢印の左記は,形式化の中です.
 出典として書かれた「(Pirie & Kieren, 1992, 1994)」のうち1992年のほうは,https://doi.org/10.1007/BF01273662であり,https://www.jstor.org/stable/3482783でも有償であることが分かりました.題目の"growth in mathematical understanding"でGoogle検索し,「画像」を見ると,同じような円の並びを見ることができ,そのいくつかにおいても,行きつ戻りつの道筋が付与されていました.
 1点で接する,大きさの異なる円は,昨日ツイートで見かけました.ただし行きつ戻りつが想定されているようには,思えません.

*1:他大学へ移ることになった先生の送別会を,その先生自身が企画されたことを思い出しました.妻と一緒に出席し,クエ鍋をいただきました.

*2:ドメインのhiroshima-u.ac.jpに関連して,編者は広島大学名誉教授です.