「うーん,子どもら来とらんのかなあ.ともあれ,ええとこに車を停めれたんで,ラジオ聴いて待っとこか」
「お,きたきた.えっと今日は,あとの子とすえの子やな」
「パパ,おまたせ~」
「おまたせ~」
「あいよ.ドア,閉まったな.はよ帰って,ママが用意してくれちゃある晩ごはん,食べよか」
「パパ,何鳴らしてるの?」
「(アクセルを踏みながら)ああ,高校野球の中継やねん.ラジオな」
「へー,今,何対何なん?」
「えっと,点数はたしか,4対4の同点やな」
「何回なん?」
「延長戦に入って,10回の表や.あ? バッター三振か.これで,ツーアウトフルベースやな」
「えー,すごいすごい!」
「すえの子よ,お前,野球に関心があるんか?」
「ちょっとね」
「ん…次のバッターも三振かいな.10回の表は0点で,裏の攻撃に移ったが,サヨナラになる可能性,高いなあ」
「あれよねえパパ,高校野球って,延長戦に入ったらランナーおるのん」
「タイブレークな.ノーアウトランナー1・2塁で,攻撃が始まるんやが.っと,送りバント成功か.ワンナウト2・3塁に変わったぞ」
「聴いとこ」
「…」
「…」
「…」
「(あとの子にも,話を振っとかななあ)」
「あとの子よ,寝てる?」
「え? いや,起きてるけど」
「高校野球は,関心ないか」
「うん! まったく関心ない」
「ま,そうよなあ.すまんが,お迎えに来る前からこの試合の行方が気になってたんで,ラジオかけてるで」
「それは気にせんよ」
「おお,満塁からのスクイズ成功で,サヨナラ勝ち,ゲームセットってか」
「試合,終わったん?」
「終わったようやな.パパ学校とか校歌とかは関心ないんで,ラジオ切っとくな」
「つけててええんやで」
「ま,運転に専念するよ.…と言いたいところやが,あとの子はもしかしたら,野球の中継やのおて,ラジオドラマとか,あるいはテレビドラマの音声だけとかやったら,食い入るように聴いてたとか?」
「うーん」
「それやったら…野球以外のスポーツの実況は?」
「あ,バレーは,ちょっと関心ある」
「なるほど,バレーか」
「え,あとの子そんなんに興味あるの!?」
「(姉に呼び捨てはあかんで)」
「そうやけど」
「あんな静かに踊ってるのん!?」
「すえの子よ,スポーツいうたら,バレーボールやがな!」