夕食は豚肉のお鍋でした.子らの分をそれぞれの皿に入れ,いただきますを言って淡々と食べる横で,うえの子が大声で叫んでいます.
手にハガキを持っています.食事より先に,このハガキに切手を貼って,ポストに入れたいというのです.
しかし今から投函しようが,明日にしようが,届くのは変わりません.郵便局は開いてないんよと,ママが言っても聞きません.
「切手か? コンビニで買うたらええやん」とパパが,何気なく言ったことで,進展しました.うえの子は62円をママからもらい,「自転車で行く!」と,家を飛び出しました.
ごちそうさまを言ってから,とりあえず,外へ…
家を出て,コンビニは左にも右にもありますが,いずれも少々,距離があります.どちらも,目をやっていると…
左から,自転車を飛ばして戻ってくる,うえの子の姿がありました.
「おかえり.うまいこといったか」「まだやねん」
なんと,ハガキは,前カゴに入れたままです.
パパも自転車に乗り,いっしょにコンビニへ行きました.
自転車置き場で止めて鍵をかけ,うえの子にも鍵をかけさせると,「ここまでは来たんやけどなあ」と言いだしました.
ひとりでお店に入り,切手をもらうというやりとりをしたことがなかったので,入らずにいったん家に戻ってきたようです.
2人で入ってレジ前で並び,我々の番になる直前に,「自分で言いや…『62円の切手をください』やで」と小声で言い,肩に手をやりました.
うえの子と店員さんとのやりとりが始まりました.
「62円の切手をください」「1枚ですか?」「はい」「今すぐ使いますか?」「…」
その質問は,想定していませんでした.ここで入り込んで,「はい,今すぐ使いたいんです」と言うと,店員さんは切手のほか,おそらく収入印紙を貼るときに使ってきたであろう,スポンジを差し出してくれました.
そんなこんなで切手を貼って,レジカウンターそばのポストで投函しました.
うえの子は笑顔になって帰宅しました.お鍋は温め直してもらっていました.
昔話: