わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

1時11分11秒

 「パパ,じゃああたしから,なぞなぞやで」
   「うえの子からかいな.へいへい…」
昨日の続き,なのですが,親子の会話を離れて,地の文にします.

「ぜんぶ1」が大好きな人がいました.
目覚まし時計をセットして,朝は,1時11分11秒に起床します.
ですがある日,目覚まし時計は,2時22分22秒に鳴りました.
目を覚まして音を止め,次に「ぜんぶ1」になるまで寝ようと,セットし直して,眠りました.
何時間何分何秒,眠ったでしょうか.

ぜんぶ1が大好きな人ですので,2時22分22秒に鳴り始めてから,1時11分11秒でないことに気づき,目覚まし時計をセットし直して眠るまでには,〈1分11秒〉を要した,としましょう.
この問題では,時刻と時間の区別が不可欠です.時間については〈…〉と,山形カッコをつけて表記することにします.
といったところで解答です.求めたいのは「何時間何分何秒,眠ったでしょうか」ですが,「次に『ぜんぶ1』になったのは,何時何分何分ですか」を考えておきます.翌朝の1時11分11秒でしょうか? 午後1時11分11秒でしょうか? ……
いえ,午前11時11分11秒というのがあります.
それで次に,眠り(直し)始めてから,この時刻までのあいだ,ですので時間を求めていきます.眠り直しの時刻は,2時22分22秒に,〈1分11秒〉を足して,2時23分33秒です.11時11分11秒から,この時刻を引いて…
時間の計算の繰り下がりがたくさん出てきて,厄介そうなのですが,図を描くことで,少し計算の手間を省けます.

もともと起きたかった,1時11分11秒から,次に目を覚ます,11時11分11秒までの時間は,引き算ができて繰り下がりは生じず,ちょうど〈10時間〉です.
あとは,起きてしまった,2時22分22秒から,1時11分11秒までの差となる,〈1時間11分11秒〉と,眠り直しまでの〈1分11秒〉を,そこから引いてやればいいのです.
式は,「〈10時間〉−〈1時間11分11秒〉−〈1分11秒〉」と表せます.先に初項から第3項を引けば,繰り下がりの回数も減らせて,〈10時間〉−〈1分11秒〉−〈1時間11分11秒〉=〈9時間58分49秒〉−〈1時間11分11秒〉=〈8時間47分38秒〉と求められます.
たしかめとして,2時23分33秒に,〈8時間47分38秒〉を加えてみると,秒は11で1分繰り上がり,分は11分で1時間繰り上がり,時は11時になるのがわかります.


西暦1111年11月11日11時11分11秒の出来事,というのは無理があるけど,2011年なら:'11年11月11日11時11分11秒 - Togetterまとめ

ポスト真実の「かけざんの順序」問題

https://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/event/ce138.htmlによると,情報処理学会のCE研(コンピュータと教育研究会)における特別講演とのことです.
読み進めていくと,56枚目のスライドに「「かけざんの順序」問題」とあります.続く4枚のスライドはツイートのURLのみです.講演では画像入りで,Web公開に際して取り除いたものと思われます.
各ツイートは以下のとおり.日時のところをクリックすると,画像入りでツイートの詳細が出ます.

2012〜2015年のツイートであり,2017年の講演にしては,古いなという印象もあります.
これらの内容に対する,講演者の所感は,公開されているスライドから読み取ることができませんでしたが,44枚目に「ファクトチェックの例(小学校編)」と題したスライドがあることから,小学校の算数指導について,ファクトチェックしてみようという意図なのがうかがえます.
ところで,今回取り上げた講演者のツイートについて,ファクトチェックというのは言いすぎかもしれませんが,他の文献との照合を試みたことがあります.ツイートは以下のものです.これも日時をクリックで,画像を見ることができます.

これを情報限の1つとして,PowerPointファイルに集約し,以下にて公開しています.

小学校2年で学習するかけ算の文章題を,アレイで考えるというのは,Q&Aにしていて,http://www.slideshare.net/takehikom/2x3-3x2/64より読めます.その考え方は,1960年代にSMSG (School Mathematics Study Group)が推進し,「現代化」とともに1970年代には消沈しています.日本の算数では,現代化のころはもちろん現在に至るまで,採用されていません.
そうではなく,かけ算を累加で導入し後に拡張を図っています.現代化のころ(1968年)に書かれたhttp://ci.nii.ac.jp/naid/110003849391の文献が必読で,現行の『小学校学習指導要領解説算数編』のPDFファイルで「拡張」を検索すれば,関連性が確認できます.昨年,日本学術会議数理科学委員会数学教育分科会が公表した提言の中では,http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t228-4.pdf#page=12も,その流れを汲んでいます.slideshareにも入れましたが,アレイは,かけ算のモデル(手段)ではなく,累加(より正確には「1つ分の大きさ×いくつ分」)で表すことのできる対象として,教科書で活用されています.
この意味づけにおいて,かけられる数とかける数の区別は大事になってきます.日本に限らず海外の文献や授業例でも,交換法則を認めた上で,a×bとb×aの違いを指摘している事例をよく見かけます*1.交換法則を根拠に,あるいは交換法則を学習したあとでは,3×4でも4×3でもいいという言説について,どこかで一覧できればいいのですが,Twitterを介して知る限り,そのような取りまとめは,見つけられません.


講演のPDFファイルから取り出した,4つのツイートを,ファクトチェックの対象として見るのは,どうでしょうか.wikipedia:ポスト真実の政治に書かれている,「客観的な事実や真実が重視されない時代」や「世論を形成する際に、客観的な事実よりも、むしろ感情や個人的信条へのアピールの方がより影響力があるような状況」と,関連付けるのです.
と書いてみたものの,労多くして益少なしの感も否めません*2
思い浮かんだのは次の文章です.なお,転載にあたり一部改変しています.

ここまで書いてきた,『かけ算には順序があるのか』で道のりが時間に書き換えられた件も,『江戸しぐさの正体』の7行ほどの「掛け算」の記述も,それぞれの本の主旨から見ると,重要性はさほど高くありません.
しかしそういったところから,著者の心情を伺い知ることもできます.
道のり(より正確には,「3km/(km/時)×4km/時」の式)では,「秀逸」という表現とともに,信頼している人の言説にパクついた格好となっています.そこには,過去の蓄積との照合も,教育現場や将来への展望も,想像することはできません.

新しく得た情報をどのように判断し,公表するのかについて

*1:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20151121/1448031600

*2:4番目のツイートに見られる「比」について,割合や,比の値(a:b=a÷b)に関する話ですが,かけ算と結びつけることも可能です.「A:BのAとBは対等」というのは,「5と3をかける」(「3と5をかける」は実質的に同じことです)と,また「もとにする量を後ろ」に書くのは,「5に3をかける」(「3に5をかける」と区別されます)と類似したとらえ方です.当ブログではhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111115/1321302821で《積指向》《倍指向》などと記載してきました.