いきなりですが問題と解答です.
[5]はばのちがう2本のテープを重ねて、四角形をつくります。細い方のテープを図のように動かすとつぎのうちどれができると考えられますか。あてはまる記号を全部書きましょう。
(あ) 長方形
(い) 正方形
(う) 平行四辺形
(え) ひし形
元ネタは都算研のhttps://tosanken.main.jp/data/jittaityousa-kousatu/h25gakuryokujittaityousa/H25gradeall.pdf#page=8です.第4学年の出題です.1本のテープを横方向に伸ばしたとき,テープの上の直線と下の直線は平行で,テープのはばはどこも等しい*1ことを,暗黙の仮定としています.
解答欄には,正解となる(あ)と(う)が書かれています.Xでポストすると,(え)も正解だよという返信をもらいました。
数学の問題として,考えるのがよさそうです.
幅の違う2本のテープを重ねたとき,その共通部分は,平行四角形です(向かい合った2組の辺がそれぞれ平行です).ただし直角に交わったときには,長方形になります.
このとき,次のどちらが正しいでしょうか?
- 2本のテープの幅に応じて,角度をうまく選べば,ひし形を作ることができる.
- どのように重ねても(交わる角度によらず),ひし形を作ることができない.
「ひし形を作ることができない」を,図なしで証明します.
細いテープの幅をa,太いテープの幅をbとします(0<a<bです).2次元直交座標平面上で,太いテープの両端の直線を,y=0およびy=bで表すものとします.
細いテープの端の直線の一方が,原点(0,0)で太いテープの下の端の直線と,角度θで交わるものとします.ただし0°<θ≦90°とします(90°<θ<180°のときは,細いテープの端の直線のもう一方と,直線y=0との交点を,原点とするよう,座標変換を行うことで,0°<180°-θ<90°となります).θ=90°のとき,(4辺の長さがすべて等しくなることのない)長方形ができるので,除外し,0°<θ<90°の場合を考えます.このとき,sinθ≠0,tanθ≠0となります.
2本のテープを重ねてできる四角形をなす頂点のうち,y=0上にあり原点でない点の座標を(p,0)とすると(一般性を失うことなく,p>0),であるので,と表せます.
同様に,y=b上にあり(p,0)と向かい合う頂点の座標を(q,b)とすると,q>0であり,であるので, = と表せます.
2本のテープを重ねてできる四角形が,ひし形となるとき,原点と点(q,b)との距離がpと等しくなり,逆も成り立ちます.
原点と(q,b)との距離をdとし(d>0),その2乗を考えます.すなわち,です*2.
ここで,によりを除去し,整理すると,以下のようになります.
dもbもも正なので,を得ます.
d=pはであり,分母を払ってb=aとなりますが,これはa<bに反します.
したがって,幅の違う2本のテープを重ねてできる四角形が,ひし形となることはありません.(証明終)
このように書いてみると,「ひし形を作ることができない」よりも多くのことを示しています.具体的には,共通部分となる四角形の辺の長さです.2本のテープの幅をaおよびbとし(a>b,a=b,a<bのいずれでもよいとします),2つのテープのなす角をθとするとき,共通部分となる四角形について,向かい合った1組の辺の長さはともにであり,向かい合ったもう1組の辺の長さはともにです.
上記の証明について,図を作ってみました.
3つ目の図では,3点(0,0),(q,0),(q,b)が直角三角形となることに着目し,bとqとθの関係に基づきtanθを用いた等式を得ました.しかしこの直角三角形の斜辺の長さをLとすると,となるので,を得ます.そしてこれが,2本のテープが重なってできる四角形の,1つの辺の長さになるのでした.
*1:関連:https://www.nier.go.jp/23chousa/pdf/23mondai_shou_sansuu.pdf#page=8
*2:数学の慣例として,とをそれぞれ,とと表記することは,承知していますが,ブログ記事として投稿する前の下書きでとと表記していまして,投稿後にとに変更してみたもののの前の空白が不自然に感じたので,変更は元に戻しました.