わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

突貫共著

昨日は,あるシンポジウムの投稿締切でした.学生にファースト・オーサーとして,2ページの査読用原稿を書いてもらいました.1か月,2か月先のことですが,査読が通れば,内容を膨らませて6ページまたは8ページで書き,その原稿(カメラレディ原稿)が論文集に掲載されます.
突貫工事ならぬ突貫執筆だったのですが,なんとか完成できた要因を並べてみることにします.

  1. 時間的・空間的な制限に注意し,厳守する
  2. 重要な作業日を設定する
  3. 頭の痛い作業は,短時間で乗り越える
  4. 最低一度は印刷して,見る
  5. 共著者教員は指導者でもあり共同責任者でもある
  6. 「なぜ」「何をした」「結果どうなった」を書きたいものから書く
  7. 成果を,その後の自分の研究や研究室の活動に役立てる

時間的・空間的な制限に注意し,厳守する

学会論文の時間的・空間的な制限といえば,

  • 締切日時
  • ページ数
  • ファイルで送る場合の,バイトサイズ

です.募集要項だったかには9月24日(木)とあったので,深夜まで頑張るかなと思っていたところ,執筆要領をよく読むと,メール送付は9月24日(木)正午までとなっていて,ちょっと驚きました.
画像の貼り付けがいっぱいで,3MB程度に膨れ上がったWordファイルでも,ReaderでないほうのAdobe Acrobatで変換すれば,数百KBになるものです(200%くらいに拡大して見ても,絵の細かいところまでよく見えます).

重要な作業日を設定する

締切日の前にシルバーウィークがあったのですが,教員のほうが,家で稲刈りをするとなったらそれを優先せざるを得ない状況でして,何日までにナニナニ,何日までにコレコレ,となかなか言いにくい状態でした.
結局,締切の前日に文章を完成させ,最終日は最後の調整だけということになりました.
分量が2ページと少ない,学生は卒論で時間をとって学術的な文章を作成している経験がある,といった要因もありますが,今回の学生・教員は,書くのに限れば,コツコツやるよりドカッとやるタイプで一致していて,それを認識していたことが,期限内の完成につながったと考えています.
集中して書く日を決めれば,それまでは,実装や評価実験,先行事例調査といった,書くための情報収集に当てればいいのです.ただし,節ごとにどんな情報を書かないといけないか,どんな図表をはめ込むかは,2,3週間前に検討しておきます.

頭の痛い作業は,短時間で乗り越える

その作業日には,1日に何度か締切を設けました.各回,簡単な原稿修正作業と,創造的な文章作成作業を入れました.
これは私が一人でこの種の文章を書くときの「乗り越え方」です.
新たに1段落,あるいは1セクションを書くのは,未開の地を探るようなもので不安もありますが,期限を設定して「踏みしめる」段階と,「あとで振り返る」段階に分けることで,やる気を生み出せました.

最低一度は印刷して,見る

印刷して,何を見るかというと,

  • フォント
  • レイアウト

です.フォントについては,前後で不統一になっていないかを見ます.さまざまな既存文書から切り貼りしていると,全体は10ptなのにある部分だけ9ptという,不自然な状態になりがちです.文章だけでなく,参考文献の統一性も,ここでチェックです.表をExcelで作ってWordに配置する際には,あらかじめ明朝にしておくのが原則です.
レイアウトについては,かつて,Wordで見れば制限枚数に収まっているけれど,印刷するとなぜかオーバーするということがありました.今回は,問題ありませんでした.
神経質な人は,印刷した状態で,上下左右の余白が規定通りかを,定規で確認することもあります.これもかつての私のことです.

共著者教員は指導者でもあり共同責任者でもある

学生をファースト・オーサーとして共著原稿を書くとき,共著者である教員は,指導者です.査読付き投稿の場合は,不採録判定になる可能性を見抜いて,改善を指示します.カメラレディ原稿についても,それが掲載され他の人が読むとなったときに,研究内容を理解してもらえ,かつ誤解を与えないようにします.
それが学生にとって最後の学術的な文章というなら,話は変わりますが,学会投稿は通常,修士論文などの途中経過として出すものですので,次に執筆する際には効率良くできよう,作業と,結果としてできる文章に,流れを持たせます.野球の,練習試合の審判(公式試合のそれではなく)のような位置付けです.
しかし共著者の教員は,共同責任者でもあります.情報として不可欠だけど,それをその学生に取りまとめさせるのは間に合わないという場合は,躊躇せず,教員が作るべきです.
赤入れの仕方も少し変わります.卒業論文修士論文ならその学生の単著になるので,自分の文章となるよう,ヒントをより多く書くことになります.しかし共著原稿で,締切も間際となると,考えさせるための赤入れよりも,「機械的にこう書き換えてください」という,いわば校正に近い赤入れになります.
加えて,数十文字以上の文言を挿入してほしい場合には,赤で手書きするのではなく,教員から学生にメールを送って,切り貼りさせます.その内容が文脈上妥当かどうかを確認するのは,赤入れ箇所を一通り修正したあとです.

「なぜ」「何をした」「結果どうなった」を書きたいものから書く

「何をした」から書き始めるとよいとよく言われますが,「なぜ」の部分から書き始めるのも,決して悪いアプローチではないと考えます.ここの「なぜ」は,読者にとってなぜその研究をしたのかという意味ですが,書く側では,研究の背景や目的,先行研究を文章化することになります.
評価実験とその結果を先に書くということは,私自身はしたことがありませんが,実験を終えて執筆するというのは,「なぜ」「何」「結果」のうち結果に関する情報が一番書きやすいという状況ですから,ならそこから取りかかるのもいいでしょう.

成果を,その後の自分の研究や研究室の活動に役立てる

書いて,投稿すれば,その日の研究室活動はおつかれさんです.私は,午後は午後であれこれありましたが.そういえば,昨日の午後は,3年向けオープンラボのための掃除でしたね.へとへとで,参加してもまともに働けそうにないなら,あえて休んで,自分の机など最小限の整理にとどめるのも,仕方ないでしょう.
突貫工事とはいえ,書いた経験,その内容を,その後の自分の研究に役立てましょう.研究成果として,研究室の一つの貢献(contribution)にもなっています,自動的に.