わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

どくばり

大学の授業中,先生が雑談を言うようなシチュエーションで.

「みなさん,日常生活を楽しく過ごしていますか? それとも,漫然と過ごしていますか?
私の授業でも,他の科目でもいいのですが,頭の中に入れることや,それを使って問題を解くことは,楽しいですか?
思うんですね.人生を充実させる要素は何だろかと…それで今日まあ皆さんに紹介したいのは,『冒険する心』,冒険心です.
冒険というのはテレビゲームの世界じゃないか,RPGじゃないかと思った人も,それなりにいると思います.あるいは,剣と魔法のファンタジーと言って,ピンとこない人もいるかもしれません.
ドラゴンクエスト,略してドラクエという,日本を代表するロールプレイングゲームがあります.最初の作品もヒットしましたが,2だとか3だとか,続編も,日本全国を震えさせるくらいの社会現象になったんですよ.
大まかに言うと,プレーヤー,つまりあなたは,テレビを見ながらゲーム機のコントローラーを操作して,剣と魔法の世界の中で,一人,あるいは数人を動かし,指示を与えます.行動の基本は,戦闘です.モンスター,すなわち怪物と戦って,勝利すると,経験値とゴールドがもらえます.
経験値は,1回1回は少ないのですが,それがたまるとレベルが上がり,『つよさ』や『かしこさ』といった,自分の能力が強化されます.『ヒットポイント(HP)』という,体力あるいは耐久力が上がりますし,僧侶や魔法使いなら,新たな呪文を覚えることもあります.
『ゴールド』というのは,純金ではなく,今の日本で『円』に相当します.要は,通貨です.野生のモンスターが通貨を持っているというのはおかしな話ですが,これは,モンスターの持ち物がその金額に換算されるけど,いちいちスライムのなになにだとかうごくせきぞうのこれこれだとかいったアイテムを持ち出すと,ゲームをプレイする側も管理する側も大変なので,ゴールドという整数型の値に置き換えているのでしょうね.
今言った中で『スライム』と『うごくせきぞう』は,ドラゴンクエストの中で登場するモンスターの名前です.ドラクエを知っている人は想像がつくと思いますが,本日のお話は,ドラクエ3を想定しています.またRPGを知らない人への補足として,スライムは最初の最初に登場する,一番弱い敵で,うごくせきぞうは中盤から終盤にかけて出現し,こちらのレベルが高くても侮れない怪物です.
あと,アイテムというのは,ここでは『道具』のことだと思ってください.
経験値を得てレベルアップし,ゴールドをためてで武器や防具,その他のアイテムを買う*1ことで,何をするのかというと,ゲーム上のキャラクターを強くして,ボスと呼ばれる,最強のモンスターを倒すことになります.ドラクエ3だと,ハーゴンだとか,シドーだとかいう,なんだかこわそうな名前がついています.えっと今,変に盛り上がりましたが……
あ,申し訳ない! そうですね.ドラクエ3の中間ボスはバラモスで,ラスボスはゾーマでした.指摘ありがとう.
冒険を始めたばかりの勇者は,バラモスだとかゾーマだとか言った名前を知りません*2.自分の家を飛び出して,全国を駆け巡り,人々などの話を聞きながら,征伐するモンスターの名前だけでなく,その住みかがどこにあるか,そしてそこに行き着くまでに,何をしなければならないかを,小さな情報を積み重ねて,自分なりに構築することになります.
そういう壮大な冒険も,RPGの醍醐味ですが,エンディングを迎えるまでに,けっこうな時間がかかります.攻略法をあらかじめ知っていてプレイしても,数十時間*3.知らなかったら,知っている人にとっては無駄なことをしたりするので,その分時間が延びます.あることに気づかなかったがために,先へ進めず,ゾーマを倒してハッピーエンドにすることなく,プレイをあきらめて別の娯楽に興じる人も,いたかもしれません.
ただ,今日お伝えしたいのは,それよりもっと小さいレベルの『冒険心』です.
『どくばり』という名前の武器があります.比較的序盤のある町で購入でき,魔法使いなんかが装備して,戦闘のときに攻撃すると,風船を針でつついたような効果音とともに,モンスターを一撃で倒せたりします.
そこで,おおこれはすごいよ,戦士と同じくらいの戦力になる,しかも魔法じゃないからMP*4を使わないし,と喜んで,その後何度も戦闘で使用していると,分かってきます.
このどくばりは,一撃で倒すのに失敗することが多いのです.
成功率は,8分の1と言われています.
失敗するとどうなるかというと,ダメージを与えられません.倒されなかったモンスターは,パーティに襲いかかってきます.ダメージを負いますし,良い防具を身につけられない魔法使いがやられると,一発で死亡してしまうかもしれません.一人の死亡で戦力が減り,他の人も次々に攻められて,全滅へと至ります.
ドラクエの場合,死亡しても,教会で生き返らせるだとか,復旧ができますが,全滅するとゴールドが半分になり,さらに,生き返らせるのにけっこうなゴールドが必要になります.あと50ゴールドで1200になり,てつのたてが買えると思って気を緩めたときに,全滅すると,600ゴールドを切った状態で再開し,しかもそのゴールドは仲間の蘇生に回されることになります.
死んでも生き返る,あるいはリセットできるのが当たり前というテレビゲームは教育上良くない,という社会の批判がありました.しかし私は,死んでも生き返ることができるからこそ,その事実をプレーヤーが知っているからこそ,ちょっとした『冒険心』でもって行動できるのではないかと思っています.
どくばりの話の続きを言いますと,どんなモンスターにも8分の1というわけではありません.ハーゴンやシド…あ,また言い間違えた,バラモスやゾーマには効きません.ここで,なぜ効果がないと断言できるのかを追求すると,知識・知恵って何ということになって興味深いのですが,ここではこれ以上立ち入らないことにします*5
どくばりで言いたいことは,こうです.アイテムの使い方が分からなければ,使ってみるのです.どくばりの場合は武器ですので,それを装備して攻撃することになりますが,他のアイテムなら『つかう』という操作をすることになります.そうして,ここで『冒険心』です…ほんの少しの勇気を出して行動し,成功に喜び,また失敗を教訓として今後に生かす,というのが,ドラクエもそうですし,じゅうぶん練り上げられたテレビゲームにおいては,いくらでもできるのです.
日常社会では,『自分がしたいと思ったこと』が,必ずしもできません.事例は挙げませんが,想像できますよね?」

補足

このエントリは,バー理科室の備忘録 新しい方法を学ぶことの大切さをドラクエに譬えて説教してみたよに刺激を受けて書いてみたものです.はてブのコメントはやや批判的になってしまいましたが,いざ自分で文字にしてみると,どこまで書いてどこは略す(読者に委ねる)といいか見定めるのが難しいことを,実感しました.
ドラクエ関連では,かつて プログラマが魔法使いなら,勇者は?テレビゲームの周辺にあるものを気づかせてくれる2冊(2) というのを書きました.また以下も,災害時という制約がつきますが,問題解決を語る上で個人的に外せないものです.

集団災害で利用する通信手段や調整は,普段使用している方法を活用することが,災害での指揮の原則です.普段使ったこともない通信手段は,それが使える人がいなければ役に立ちません.使い方が分からないからです.時には,鍵がかかっていたりします.
(とっさの時に人を救えるか―災害救急最前線 (中災防新書 (015)), p.64)

日頃の訓練と,どこに何があるかの把握が,重要ですね.p.69には,『通常の手法を少しアレンジすることにより集団災害に応用できる柔軟性が必要です』とも書かれています.

自己中に陥らない災害対策・トリアージ

*1:買うのではなく,冒険の中で手に入れるアイテムは,今回の話では対象外とします.

*2:あれ? アリアハンで,王様からバラモスの名前を聞くんだったかな?

*3:DQ3タイムアタック3時間13分22秒 - だらだらぶろg DaDaDa!.すごい人はすごいものです.

*4:知っている人は知っていることですが,magic powerの略です.そういえば昨日,あるところで「MF」という略語が出てきて,言われるまで「メインフレーム」のことだと気づくことができませんでした….

*5:とはいえ脚注に.私自身,バラモスやゾーマに対して,どくばり攻撃を試みたことはありません.ですが,本日のエントリを書く際に,ドラクエの攻略ページをいくつか読みました.もしどくばりが効果的なら,どこかに書かれているものですが,一切ありません.マホトーンがバラモスに決まる(ただし効き目はよくない)という情報は,見かけたりします.こういうふうに,自身の経験以外のところから,知識・知恵を得ることも,社会に出るまでにできるようになってほしいものです.自分なりに試してみて,それを他の人が読んでくれそうな形式や媒体で出すことができれば,なおよしです.