わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

質問にお答えします

メールやTwitterで3件,問い合わせなどがあったので,知っていることを書いておきます.

1. 日数教から見た数教協・外延量・内包量

メールからの質問です.表現は一部変更しています.

算数教育指導用語辞典』を見てみたところ、「外延量・内包量」などの項目が解説されていて、びっくりしました.
この本は、日本数学教育学会 編著となっています.民間教育団体の数教協とは違って、公的な色彩のある学会という印象を受けるのですが、このあたり実際にはどのように考えれば良いのでしょうか.

お答えします.戦後からの算数教育を見ていくと,数学教育協議会は無視できない存在と言っていいと思います.量を分離量と連続量に,連続量を外延量と内包量に,内包量を度と率に分けるという,量の分類(『算数教育指導用語辞典』ではp.7脚注にあります)は,いろいろな本で目にすることができます.
交流も,あります.日本数学教育学会による,乗法の意味づけで示したとおり,『数学教育学研究ハンドブック』 第3章 教材論 §2 演算の意味・手続き(pp.73-82)の中で,乗法の意味に関して「内包量×外延量」を挙げているほか,銀林浩が「水道方式の理論」と題して1962年,日本数学教育会誌に寄稿しているのを,同セクションの参考文献から知ることができます.また国際会議の主催・共催については,スペイン語の余談で書いています.
「民間教育団体」という表現,そして団体名を明記している本もあります.

第6節 民間教育運動と単元学習からの脱却*1
(略)
日本を復興させるには,科学技術を支えるための数学と学力が必要だった。そのうえで,生活上の諸課題を解決する数学教育を行うべきであることに気付き,徐々に単元学習は批判されるようになった。そこで,戦前のように数学を系統的に指導しようという運動が文部省側と民間教育団体側から始まり,まず,高等学校の学習指導要領の改訂から着手された。当時の教材等調査研究会数学小委員会のメンバーには,文部省側と日本教職員組合側の双方の研究者が入っている。日本の将来のために官と民が協力して学習指導要領を作成していたことが分かる。
(『小学校指導法 算数 (教科指導法シリーズ)』p.45)

例えば,横地(1961)に紹介されている例では,第6学年における九九のつまずきが調べられ,6,7,8,9の段の九九の誤答が多いことが示された。また,難しい7の段を最初に教える教育実践を行い,図3-48に示すように,7の段を初期に指導したクラスの成績が教科書通りに指導したクラスより良かったという例もある。このような教師による研究が盛んになり,数学教育実践研究会や数学教育協議会などの民間教育団体や日教組全国教研による活動が活発でもあった。
(同上p.47)

私は,数学教育協議会に限らずどの団体であれ,トランプ配りをはじめとするどんなメソッド(手法)であれ,まずは「そういうものがある」と認識し,本を中心にそのつながりや普及範囲を見ていくようにしています.団体であればその強み,メソッドであればコンテキスト(適用条件*2など)にも注意します.
ブログやツイートに引用やリンクが多いのは,そこに書かれている字句のほか,誰がいつ何と表明したかをそのつど確認しておく意味合いがあります.あとで調べ直すのにも,使っています.

2. なぜまた今頃になって

お答えします.それは,「はてなブックマークはてブ)するとTwitterに送る」という機能によるものです.はてなの解説をご覧ください.

当該のページは,wikipedia:かけ算の順序問題にある「3本耳のウサギ」の絵が板書されているということ,かつてブックマークしたことがなかった*3ことから,先日,はてブした次第です.
ツイート内の「[5×3]」は,はてブ時につけた「タグ」です.かけ算・算数教育の関連では,次のように使い分けています.

  • 5×3:被乗数・乗数の区別を重視している事例など
  • かけ算の順序:「かけ算の順序」が書かれている記事など
  • 算数:かけ算が必ずしも出現しない,算数教育の事例など

ご理解のほどよろしくお願いいたします.

3. ななめ

お答えではなく,このツイートをもとに,自分の気になっていることを書いていきます.
上のツイートの前提として,http://twitter.com/takehikom/status/312858555407556609http://twitter.com/takehikom/status/280417449780838400があります.
ななめの基本的なアイデアは,「縦になる辺を選択すれば,横の長さは確定します」のところです.児童らとの対話は,肉付けであって本質とはなりません.
気になることというのは,縦になる辺を選択すれば,横の長さは確定するというのが,いつどの人々の間で共有されていたかです.ななめに置いた長方形でどちらが縦に/横に「なる」か決められない,というツイートがあったと記憶しますが,その意図は,長方形では縦と横を一意に定められないという指摘までであり,「縦になる辺を選択すれば,横の長さは確定します」との間には,ギャップがあります.
そこで,「かけ算の順序」の論争や算数教育の実情に関して

  • 長方形は,縦と横の一方を選択すれば,他方が確定すること
  • 小学校ではそのような選択をしていないこと(あるいは,ななめに配置した長方形で,図形の把握や面積の計算に困難を生じている事例)

について,いつ誰が言及したかを知る必要があります*4.そのようなツイートやブログがあれば,takehikomに名指しツイートをいただけると幸いです.
当方の理解は,ななめに配置した長方形は,授業にも評価(特に外在的評価のための学力調査)にも意義が乏しいため使用されず,むしろ底辺を斜めにした平行四辺形の面積計算のほうが活用されている,といったところです.
なお,ななめの記事よりあとの出版物ですが,『新・算数指導の疑問これですっきり―It’s OK!』p.45には,「長方形はどちらが縦で,どちらが横と教えるとよいですか。」の質問と「長方形そのものには,一意的に縦・横の別がない。次の図のように,一方を縦とみれば,他方は横になるのである。」の回答が,ななめの配置を含む3種類の長方形とともに記載されています.

(最終更新:2013-03-18 晩)

*1:引用者注:時期としては昭和30年代ごろです.第5節の見出しは「復興と独立の時代(新教育と単元学習)」,第7節は「数学教育の現代化運動と科学科運動」です.

*2:「誰がそれを使うのか」は,適用条件に含まれます.

*3:したか否かは,はてなブックマークFirefox拡張で新しいインターネットを体験しようを入れていてステータスバーで見るようにしています.

*4:「いつ言ったか」だけでなく「その言及がその後,共通認識となったか」も大事なのですが,まずは発言の把握からです.