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「図書や雑誌、新聞」を起点に,新聞社と図書館協会の思惑を探る

 日本図書館協会は24日、消費税の軽減税率制度に関し、図書や雑誌に軽減税率適用を求める声明を出した。
 声明は、16日に公表された2016年度与党税制改正大綱で、図書や雑誌への適用が引き続き検討事項となったことに「大きな失望」を抱いたとし、図書や雑誌、新聞は「食料品等と同様に、人々の不可欠必需品」だと指摘。検討を加速し、必ず適用を実現するよう強く求める、としている。
 公立図書館の図書や雑誌の購入費は1998年度以降、減少が続いている。同協会は、増税の影響で購入できる資料が極端に減り、文化や情報の源などが枯渇することを危惧している。

http://www.asahi.com/articles/ASHDS63FNHDSUCVL01N.html

上記記事を読んで,はじめに思い浮かんだのは,「新聞が認められたのだから,図書や雑誌にも」の発想でした.ほどなく,この「俺も俺も」の要求を,認められたところ(新聞社)が報じている点が,面白いなと思えてきました.
ポイントになるのは,“図書や雑誌、新聞は「食料品等と同様に、人々の不可欠必需品」”の記述です.こういうとき,カギカッコは,その声明の中からそのまま書き出したはずです.カギカッコのない箇所は,記者の創意工夫なわけで,図書や雑誌を,新聞と対等---不可欠必需品という意味でも,軽減税率が適用されるべきだという意味でも---に扱ってやろうじゃないか,というのが,記事から伝わってきました.
声明では,図書と雑誌を対象とするよう要望し,新聞は除外(先に認められた扱い),なのでしょうか.情報源を確認しておきましょう.
日本図書館協会のトップページで,リンクされていました.

図書・雑誌・新聞への消費税軽減税率の適用ができるよう継続的検討を強く求めます。


 先般、公表された2016年度税制改正大綱において、新聞について軽減税率の適用をお認めいただいたことを、新聞が図書館の基幹的資料であることに鑑み、歓迎いたします。しかし、図書・雑誌については2017年4月の実施に向けて引き続き検討事項となったことに、大きな失望の念を抱いています。
 わが国は、他国に類を見ない高い読書文化の普及に支えられて、知識・情報・教養の高い国民性がつちかわれ、もって我が国の発展を実現してきたといっても過言ではありません。わが国が今後もよりよく発展し続けるためには、図書・雑誌・新聞を国民の文化・知的基盤として普及することが不可欠です。
 その基盤を支えてきた図書館は、乳幼児から高齢者まで、全ての人々に対し、生きる力を提供しています。生きる力の源は、図書館が提供する図書・雑誌・新聞です。つまり、図書・雑誌・新聞は、食料品等と同様に、人々の不可欠必需品です。
 図書館、とりわけ公立図書館は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を社会的に保障する機関のひとつとして、人々が自由に、必要とする知識や情報に接することによって、人が人として生きていくうえで欠くことのできない知識、思想、文化、情報を得ることができます。
 しかしながら、近年における公立図書館の資料費(図書・雑誌・新聞等購入費)予算は、減少の一途をたどり、1998年度の349億5345万円をピークに、2014年度は284億9547万円で、図書館1館当たりにすると883万円になっています。仮に消費税が8%から10%に上がると、実質資料費は図書館1館当たり803万円となり、人々が手に取る図書・雑誌・新聞は極端に減少することとなります。その結果人々が必要とする知識、思想、文化、情報の源が枯渇し、ひいては、国力に影響することを、われわれは危惧します。
 ついては、2017年4月の消費税軽減率の実施に向けて、検討を加速し、必ず、図書・雑誌への適用を実現くださるよう、強く求めます。

日本図書館協会の見解・意見・要望

きちんと裏取りしておいて良かったです.見ればわかるとおり,この要望(声明ではなく)では,「図書・雑誌・新聞」という表記をとっています.新聞が先行して図書や雑誌が「俺も俺も」というスタンスではなく*1,これらを一体として,「新聞だけでなく俺も俺も」という方針を取っているのです.
とはいえ,その列挙*2において,新聞を3番目としているのは,要望を文書化した図書館協会の作為であるとも想像します.その根拠となりそうな記載が,“資料費(図書・雑誌・新聞等購入費)”のところです.「資料費」だったら,どんな予算なのか想像できるけれど,カッコ書きの「図書・雑誌・新聞等購入費」は,見慣れません.Googleで検索しても,この名称による費目が,定着されたもののようには見えません.ということで,その書き方もまた,「新聞だけでなく俺も俺も」をうかがわせるものとなっています.
ここまで,新聞社そして記者の立場と,図書館協会の中の状況について,推測を交えて書いてきました.
自分はというと,教育研究の活動を取りまとめて学会発表し,その論文が図書館を通じて検索閲覧できるという形で,恩恵を得ています.著書だとか,新聞で取り上げられるだとかは,もっと成果をあげてからです.

*1:しかし要望の中の“新聞が図書館の基幹的資料であることに鑑み、歓迎いたします”に限ると,新聞先行ですね.

*2:列挙という観点では,「図書・雑誌・新聞」は中黒で区切られているのに対し,「知識、思想、文化、情報」では読点になっているのも,興味深いところです.前者は一体化すべきもので,後者は多様に広がるもの,でしょうか.