柿の収穫をした翌日に，右手のてのひらを見ると，人差し指のところに，数ミリの黒い塊が見えました．
左手で払っても，取れません．
かさぶたが，できていました．
仕事から帰り，「ただいまぁ」と言っても，誰も迎えに来ません．
テーブルで，さきの子とあとの子が勉強をしていました．宿題はいつも，帰宅してすぐやっているとのことなので，これは自由勉強です．
2人の書いているのが見える位置に座ると，あとの子は無言で，消しゴムのカスを手で払い，こちらに飛ばしてきました．
こらこらそんなん人に向けたらあかんやろと，叱るよりも，かさぶたのことを思い出しまして，2人に見せました．
「なあなあこれ見てみぃ．消しゴムのカスがな，こんなとこについてしもてな，手ぇで払ろても，ふぅふぅしても，取れへんねん．ほんまのこと言うたら，これ，かさぶたやねんけどな」
さきの子とあとの子は，パパの右手に顔を近づけ，消しゴムのカスと似て非なる，かさぶたを認識したのち……ふぅふぅをしはじめました．
2人の冷たい息が，手に当たりました．
「いやだから取れへんねんって」と言いながら手を引っ込め，3人で大笑いしました．
