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ウルフ教授

ベストプロフェッサー (高等教育シリーズ)

ベストプロフェッサー (高等教育シリーズ)

米国の「優秀教師」*163人のインタビュー,授業資料,そして授業参観を通じて集約し,優秀教師像や,学生のための優れた教育方法を説明しています.
良い教育をするための方策のほうが,重要といえば重要なのですが,学問に王道なし,教育にも王道なし,で耳の痛い話です.むしろ,これをやったらアカンというもの,言ってみれば大学教育版アンチパターンが,あちこちに書かれていて,実のところ親しみをを覚えます.例えば『テストに向かってのティーチング』(p.171)と書くだけで,ああ自分の科目もそうなんだよなあと思ってしまいます.
アンチパターンの最たるものは,pp.145-147に登場する「ウルフ教授」です.実際,フィクションの教授像です.特徴は『「支配魔」(control freak)』(p.146)であり,具体的には『学生と教師は従属的な関係である.学生は教師が言う通りに行われることが期待される』(p.147),『教師たちはその授業の成績評価と単位という形の操縦桿を学生たちに対して行使する』(同)というものです.
じゃあどうすればいいかについては,まあそれが本書の意義であり,全体で扱っていますが,すべて書き写すわけにもいかないので,ウルフ教授の直後の表現を抜き出しますと,

学生に対して権力を誇示するのではなく,学習の花を咲かせるべく努力をしていた.彼ら(引用者注:優秀教師)のティーチングの実践は学生の学習への関心に由来し,それは力強く感じられ,学生たちに伝わっていた.
(pp.147-148)

であり,言い換えてみますと

  • 成績・単位よりも,授業を通じていかに学んだかを見る*2
  • 学力向上をサポートするんだという教員の意思・意欲を学生に伝える

といったところでしょうか.

*1:この表現は,本書にたびたび出現します.

*2:加えて,目標・計画をきちんと立てて授業と指導をすれば,合格点は後からついてくる…というのは曲解かな.