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続・大学院

大学院の残りのトピックです.

短期修了

マスターコースの標準修業年限は,2年で,ドクターコースの標準修業年限は,3年です.それより長く在籍すれば,留年です.
逆に,それより在学期間が短くて,しかも退学ではなく修了するというケースもあります.これも,大学がそういう規定を設けていればの話です.
飛び級と合わせてできた制度で,マスターコースは最短1年,マスターコース・ドクターコース合わせて最短3年で,それぞれ修了できます.「短期修了」と言います.
「学部4年 + マスター2年 + ドクター3年で9年間」ですが,飛び級と短期修了を組み合わせると,「学部3年 + マスター1年 + ドクター2年で6年間」となります.18歳で大学に入学した人が,24歳で博士号を得ることも,可能なのです.
ただそういう事例を聞いたことはありません.これをすれば,間違いなくニュースになるはずなのですが.
私が知る限りで最短なのは,「学部4年 + マスター1年 + ドクター2年で7年間」です.

TA, RA

大学院生は,学生として学び,また研究者の卵として教員の指導のもと,研究をしていきます.
そのほかに,授業をお手伝いすることもあります.そういう大学院生は「ティーチングアシスタント」と呼ばれます.略称はTA(ティーエー)です.
TAには時給に基づき給与が支払われます.そもそも大学に雇用されます*1.ただし,その授業の手伝いのために何時間でも働けるというわけではなく,週何時間で何週間というふうに,契約時に勤務時間数,それと勤務内容が決められています(その設定は,TA本人の同意も得ますが,基本的には授業の担当教員が行います).
TAのみで(教員がいない状態で)授業をすることや,TAが成績評価に携わることは,認められていませんが,特に実験・演習では,1人や少数の教員で対応しきれないところを補ったり,中間提出などがあったときに改善のコメントをつけたりして,あるとないとで大違いです.
ティーチングアシスタント(TA)は基本的に,マスターコースの学生が行います*2.ドクターコースの学生が,研究のお手伝いをして,給与をもらうという携帯も,あります.リサーチアシスタント,RA(アールエー)です.

奨学金,学振

ただし,TAやRAの給与では,授業料や生活費をまかなえません.2年間,あるいは5年間,金銭的に安定した学生生活を送るためには,奨学金を得ることも検討したいところです.
国内の奨学金制度で最も有名なのは,日本学生支援機構によるものです.これを「育英会」と呼ぶ人もいます.「日本育英会」の奨学金事業を引き継いだ,独立行政法人だからです.
奨学金を得るときは,「貸与」すなわち返還義務があるか*3,「給与」すなわち返還義務がないかについて,よくチェックする必要があります.日本学生支援機構奨学金は,いずれも貸与です.ただし,第一種奨学金は無利息なのに対し,第二種奨学金は利息がつきます.
他にも官民さまざまな奨学金制度があります.大学が管理していることが多いので,学生センターなど,しかるべきところで相談するのもいいでしょう.
ドクターコース学生として研究をしながら給与がもらえる制度が(社会人ドクターとは別に)あります.日本学術振興会の特別研究員制度です.これは「学振(がくしん)」と略されます.
ドクターコースのほか,ポスドクオーバードクターも支援します.
とはいえ,狭き門です.ドクターコースに入ったときから3年間支給となる,DC1に選ばれるには,申請時点で学術論文が最低1本必要,いや1本じゃ足りない,という声もあります.

同等以上の能力

桑田真澄氏が早稲田の大学院に合格した際,大学卒でないのに大学院に入れるのかというので,少し賑わいました*4
これについては:

文部科学省の大学振興課によると、高卒の学歴では「基本的には、入学資格はない」。とはいえ、学校教育法の施行規則で、大学による個別入学資格審査にパスした人も大学院の受験資格があると定められている。早大に限らず、どこの大学でも「高卒大学院生」がいてもおかしくないわけだ。
では、どんな人なら合格できるのか。
文科省では、「個々の大学が、大学卒と同等以上の学力があると認めた場合です。通常の大学院入試より厳しくなります」と説明する。ただ、その学力をどのように量るのかについては、定量的な基準はなく、個々の大学の審査によるという。

「高卒で大学院受かるのか」 桑田合格で早大に質問相次ぐ - ライブドアニュース

「厳しくなる」というよりも,受験者全員が受ける入試(筆記だったり面接だったり)の前に,「審査」をするのが通例ではないかと思います.
募集要項(募集要領)には,出願者の区分があって,大卒でないけれど出願するという人は,提出書類が多くなり,それが審査の対象となるわけです.
「同等以上の能力」を審査して,受験を認めるか否かを判定するという制度は,大学院入学(マスターコースに入る)だけでなく,ドクターコースに,修士なしで入るという人のためにも設置されているものです.

論文博士

ドクターコースでは,標準的には3年間研究室で学んで(ここでも社会人ドクターは別として),査読付き論文を中心とした研究業績を挙げ,博士論文とするものです.これを「コースドクター」「課程博士」と言います.
これとは別の「ドクターの取り方」があります.
研究業績をうんと持っている人が,大学に学位取得を申請して,博士論文を提出し,審査を経て博士号を得るというもので,「論文博士」「ペーパードクター」と呼ばれます.
「ペーパードライバー」というと,運転できなさそうなニュアンスがありますが,「ペーパードクター」はそういうマイナスの意味合いはありません.申請までにどれだけ業績があるか次第ですが,コースドクターよりも難易度が高いと言えます.
私が通常の年数で,すなわちコースドクターとして論文を書いていたのと同じ時期に,ペーパードクターで博士論文を出そうという方がいました.何かで,主査への丁寧なカバーシート*5を目にしたときには,研究業績だけでなく実務経験も豊富なら,こういう文章になるのかと,驚いたものです.
論文博士の学位記につく番号は,「論第○号」のように,課程博士と少し異なる番号になる,と聞いたことがあります.あいにく,実物を見たことはありません.
またこの制度は日本独特で,将来的には廃止されるそうです.

*1:辞令も出ます,うちの大学では.また,私は書きませんでしたが,履歴書の職歴欄に書く人もいます.

*2:ただし,マスターコースに限るという規定はないはずです.大学院大学にいた私の場合は,ドクターのときにTAやっていました.そういえば,M2のときに,モグリで受けていた科目で突然TAすることになったこともありますが,それは一期生だったことその他による,例外中の例外です.

*3:「貸与の奨学金制度は奨学金ではない,学資ローンだ」という考え方の人もいます.

*4:http://news.livedoor.com/article/detail/3996257/, http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1322725193

*5:本文とは別の手紙文で,通常,本文の上につけます.私はD3の春先に,教授に読んでもらう論文原稿のカバーシートに失礼な表現をとっていて,後日,「これから社会人になるんだから」とお叱りを受けたことがあります.「カバーシート」という言葉自体は,FAXを送る際にも,どこからどこへ,何枚送りますといった内容で,本文の前に付ける用紙として知られていますね.