アカデミア・サバイバル―「高学歴ワーキングプア」から抜け出す (中公新書ラクレ)
- 作者: 水月昭道
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/09
- メディア: 新書
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ただ,学会の懇親会の発言は,和歌山弁で言うと「ありえやんでこれ」です.
無事に名刺交換が出来たならば,次に必ずやるべき作業がある.おねだりをすること,だ.過去に大好きな人の前で見せたような満面の笑顔を作り,「先生,実は」とおもむろに切り出す.そして,ズバッと言う.「欲しいんです,先生の論文」.
これこそ研究者を籠絡(ろうらく)する殺し文句なのである.相手は間違いなく“完オチ”する.
(略)
研究者というのは,自分の研究に関心を持ってもらえることが,何より嬉しい生き物なのである.この感覚はおそらく一般の人には分からないだろうから,もし,研究者に出会うことがあったら試しにこの一言を出して相手の反応を観察してみて欲しい.きっと,これ以上ないというくらいの嬉しそうな表情を顔に浮かべるはずだ.
(p.172)
そんな発言,一度も目にしたことがないし,古い感覚だなあとも思います.著名な方なら,論文なんて,Google ScholarでもCiNiiでも,探せばいくらでも見つかるわけです.
本当に完オチさせたい,まあそこまでいかなくても,自分のことを覚えてもらいたいなら,その研究者が書いた論文をよく読んでおいてから,懇親会で「先生のいついつの論文を読ませていただきまして…」と切り出すべきでしょう*1.テクニカルな議論ができればなおよし,そして更なる(その研究者にとってあまり普及しているように思えないけど広く知ってほしいような)論文を送ってもらう同意を取り付ければ最高,なのではないでしょうか.
ただし,「その研究者が書いた論文」には要注意です.テクニカルな議論ができるのは,単著か,共著でも筆頭筆者になっているケースに限られます.共著で,その研究者の名前が,著者順で二番目以降に書かれていれば,論文の一字一句まではあまり関わっていない可能性が高いです.全体像,背景や動機,目指すものあたりを教わるのが,いいでしょう.
*1:研究発表会での懇親会なら,予稿を読んで,「今回のご発表ですけど…」になりますね.