わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

さくらんぼ計算

以下にて,関連情報へのリンクを整理していますので,合わせてご覧ください.

さくらんぼ計算」について,Webや本を調べてみました.

さくらんぼ計算とは

例えば9+4を計算するときに,たす数の4を,1と3に分け,4の左下と右下に配置してそれぞれ○で囲み,4と線で結びます.この形をさくらんぼに見立てて,「さくらんぼ計算」と呼ばれています.


なぜ1と3に分けるのかというと,「9に足したら10になるもの」として,1を得るからです.3は,4から1を取り出した残りであるとともに,たし算の結果,一の位の数になります.
さくらんぼ計算は,1年生の「くりあがりのあるたし算」でよく用いられます.くりさがりのあるひき算についても,類似した図式があります.

本から

  • 向山型スキル・算数の授業パーツ100選



(pp.66-67)

  • “考える算数”のノート指導


(p.109)

  • 表現力はこうして育てる!


(p.81)

(p.93)

掲示板の批判的な書き込みの中に,「さくらんぼ計算」はTOSS由来というものがありました.今回,発祥を確認することはできませんでしたが,現状の活用としては,TOSS(向山型算数)に限られているわけではない,と言ってよさそうです.

原理

さくらんぼ計算を支えているものは,「加数分解」です.
冒頭の9+4の計算について,9+4=9+(1+3)=(9+1)+3=10+3=13と書くことができます(ただし,こう書けることを,小学校で学習するわけではありません).4は加数と呼ばれ,これを1+3と分解するので,加数分解となります.
加数分解では,被加数(この例では9)をもとに,「足したら10になるもの」を加数から取り分けることになります.「足したら10になるもの」は,10の補数といいます*1
さくらんぼに見立てていませんが,加数分解や被加数分解を図で説明しているものに,啓林館の加数分解・被加数分解|算数用語集があります.教科書では,東京書籍の平成23年度用教科書(あたらしいさんすう1, p.96)にあり,http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou/subject/sansu/sansu-05.pdf#page=1 の右上で見ることができます.
4を親,1と3を子といった親子関係の表し方をせずに,加数分解による計算を解説しているものとして,以下の本などがあります.

賛否

さくらんぼ計算に対する否定的意見を集約すると,次のとおりです.

  • 子どもが混乱する.
  • そんな方法を使わなくても計算できる.

さくらんぼ計算を推奨する立場の意見は,次のようになります.

  • 暗算や暗記よりも,良い方法である.
  • 「10を作ること」「分解・合成」が大事であり,今後の学習にも有益である.

ざっと見た範囲でですが,さくらんぼ計算に否定的意見の書かれた本は,見当たりませんでした.
その理由として,採用しないならわざわざ書かない*2だとか,くりあがりのあるたし算に関する(いくつかある中の)一つの手法という程度に位置づけているとかも,考えられます.
とはいうものの,このやり方に「算数・数学」の観点と「視覚的・操作的」な観点で,一定の価値を,算数教育に携わる方々の間で共有しているように思われます.

*1:余談ですが,1の補数と2の補数は,2進数の表現と関連して重要な概念であり,大学の情報工学の学科に入れば,1年で学習します.もし大学受験をくぐり抜け,4月からコンピュータ関連の学科に入学するという人がもし,この文章を読んでいてくれたら,「-3」という数を,マイナスの符号を使わず2進数で(0と1だけで)表す方法を考えてみてください.

*2:『向山型スキル・算数の授業パーツ100選』では百マス計算を批判しており,それよりも良い手法として,サクランボ計算を提案しています.