わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

加法の順序は,ネットde真実? (2015.04)

より,

にリンクされていて,ざっと本文を読みました.
「5+7のみが正解が算数教育の常識」を撤回した上で,算数教育「学」がつまらないという主張は維持されています.
加法に関する「算数教育主流派の考え」を,丸囲み数字で4項目,整理されていますが,そのうち「③追加には式の順序が有り、はじめの数+追加された数でないと誤りである(単項演算であるから)。」については,説得力のあるブログ主さん独自の事例をお持ちでないようなので無視するとして,残りの3項目は,米国でも

を見る限り同様と考えられます.
国内・国外を問わず,学習を通じて子どもたちはどう考えているかについて,事例が不在なのが,気になってきます.検索すると…「1年生の子どものとらえ方」について,当ブログの上記記事の,ほんの少し前に,文章を目にしていました.

第1学年で「たし算」を学習する場面で,例えば,「赤い車3台と白い車2台があります。車は全部で何台あるでしょう?」(問題①)という場面において,この事象を「3+2」と表すことを指導する。
(略)
また,同じ1年生のたし算でも,例えば「駐車場に赤い車が3台停まっていました。後から白い車が2台やってきました。駐車場の車は何台になりましたか?」(問題②)という事象も扱う。ここでも同様に文字を書き写させ,絵に描かせてみたりブロック操作をさせてみたりすると,子どもはやはり手間どる。一方,「式」に表す場合は,やはり単純に「3+2」と表すことができる。
(略)
ところが,これら2つの問題場面を「2+3」という「式」で表現したらどうなるだろう。和を求めるという点では「3+2」であろうが「2+3」であろうが数学的にはどちらの式も間違いではない。しかし,1年生の子どものとらえ方は違う。
問題①は「3+2」でも「2+3」でもよいが,問題②の場合は,「3+2」でなければだめだという。
つまり,「合併」の事象である問題①は被加数,加数の順序は関係ないと判断し,「増加」の事象である問題②は被加数,加数の順序に意味があると考えるのが子どもなのである。時系列という点から考えると,問題②のほうは確かに被加数,加数の順番に重要な意味合いが込められることになる。
このように同じ「3+2」という「式」で表現されるにもかかわらず,その「式」の意味が異なるということを子ども自身が実感的に体験することは,言語としての「式」を理解する上で重要な体験だと考えられる。つまり,「3」と「2」という数字を記号「+」でつないで併記したものが「式」であるという認識ではなく,「式」は「話」を表しているという見方であり,1年生の子どもの発達段階としてはとても自然で理解しやすいわけである。
(山本良和:式の「よさ」を味わう授業,『算数授業研究 VOL.82』pp.2-3.転載元:被加数・加数の順序.転載にあたり番号を丸囲みに変更した)

「被加数,加数の順序」という言葉が出ているのは,『算数授業研究 VOL.80』が影響していると思われます.というのも,VOL.80では「かけ算を究める」と題して特集が組まれています.その編集・執筆にあたって,それぞれの人が『かけ算には順序があるのか』を読んでおり,その後,上記の著者は,それならたし算の順序はどうなのだろうかという問題意識を持ち,そこで授業の経験を思い出して文章にしたとすれば,すんなり読めます.なお,“の順序”の前に演算の種類(かけ算だとか加法だとか)ではなく演算対象を書いている事例は,1960〜70年代の論文や書籍でも目にしています*1
それはそれとして,上の引用部分を読んで,ケチをつけるのは簡単です.そういった理解に至るような教え方が良くないと,言えばいいのです.言えば,賛同するコメントも得られやすいですし,Twitterなどで拡散してもらえる可能性があります.
しかし,教え方が良くない,先生方は認識を改めるべきだと,言えば言うほど,学びながら,先生の問いかけやテストなどの問題でそのつどアウトプットをする,子どもたちから距離を置くことになるのにも,注意をしていきたいところです.
ブログ記事にせよツイートにせよ,情報発信が,承認欲求を目的としてしまうと,一過性のブームで終わってしまいかねません.不完全でも知り得た情報を通じて,現状を認識しようと努力し,これからのためにどのような情報をいま,残せるのかを考慮して表現を選ばないと,いけないのですけどね.
国外の状況についてもう1つ:たし算の順序論争

(最終更新:2015-04-02 朝)

*1:「小学校では,例えば乗算における被乗数と乗数の区別や順序をやかましく指導することすらあると聞く」(転載元);「8) 以下では,乗数,被乗数の順については,わが国の表記による.」(転載元