わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

2.3×5

ざっと読んで,まず思い浮かんだのは「ドン・キホーテ」.企業じゃなくてwikipedia:ドン・キホーテのほうです.
それはさておき,本日取り上げたいのは次の箇所です.

ところが、こうするとややこしいことが起こってしまうのだ。現在の学習指導要領では、「小数×整数」と「整数×小数」を別の学年で学ぶことになっている。どういうことかというと、1mの重さが2.3gの針金5m分の重さを求める計算と、1mの重さが5gの針金2.3g分の重さを求める計算は、別の計算であると考えている。学年をまたぐことはおいといて、このこと自体はしごく妥当なことだと私は思う。

教科書の問題点は教科書会社に意見を出していく。(並行して文科省にも)|tamami_tata|note

http://kodomo.artet.net/?eid=1229006も合わせて読んだのですが,なぜ「別の計算である」かが,記されていません.
あえて推測するなら,「小数×整数」は4年で,「整数×小数」は5年で学習することが,学習指導要領に書かれているからだ,といったところでしょうか.
学習指導要領解説から,根拠を見ておくと,「×整数」は累加で計算ができます.視覚的・操作的にも,「何のいくつ分」で表現できます.昨年,wikipedia:かけ算の順序問題の改訂に携わった際,「0.1 × 3ならば、0.1 + 0.1 + 0.1の意味である」を入れましたが,これは学習指導要領解説から取ってきたものです.被乗数にあたるほうは分数でもかまいません.
これと比較すると,「整数×小数」や「小数×小数」は,「何のいくら分」と表せます.計算という観点でも,小数というのが1未満であっても,1より大きい値であっても,累加で計算ができなくなります(乗法の意味の拡張).
海外文献と照合することで,さらに違いを見ていくことができます.

事情により出典は手短に:isbn:012444220Xのp.101です.
表の各行,「Discrete」は分離量,またはそれを数に対応させたものです.「Continuous」は連続量です.「Countable Continuous」は,数えられる連続量となります.ここまで書いてきた中でいうと,5mや5gは,数えられる連続量です.これが乗数となるようなかけ算もまた,累加で計算ができるというわけです.
学習指導要領解説に戻りまして,小数のかけ算を扱うより前,第3学年に,「1mのねだんが85円のリボンを25m買うと代金はいくらか。」というのが書かれています.このうち,25mは数えられる連続量です.したがって累加で計算するなり,1mを25個分かいた図を作ったりできるわけですが,精密な図にしなくても,場面を認識でき,計算できることがそこでは期待されています.
「1メートルの長さが80円の布を2.5メートル買ったときの代金が何円になるか」となったとき,長さは「数えられる連続量」でなくなり,連続量として扱うような学習となっています.