「あら,この食パン…」
「どした?」
「ぼこっといってんねん」
「ぼこっとて…穴あいてんのか?」
「ちゃうんよ.これ,な」
「へー,そういう方向にへこみか.クレーターみたいやな」
「こんなんもあるねんな」
「空気が入ったんかな」
「せやね(マーガリンを塗る)」
「ぼこっと,って言うから,誰かがかじったんかと思たぞ」
「食パンかじる人はおらへんよ」
「うーん,今,隣の部屋でテレビを見てる,すえの子とか」
「あの子は,そんなことせえへんな」
「そっか」
「これ食べるとなったら,残さへんよ,あの子は」
「食べるとなったら,なあ…」
「え?」
「すえの子あとの子やが,今な,スティックパンを両手に1本ずつ持って,食べんと,寝そべってテレビ見とんのな.おう,こっち向いたか.せや,お前や」
「あの子はね…物を持ったら,なかなか放さんのよね」*1
「ああ,それは言えるな」
「かじる子ぉ言うたら,あとの子ちゃんやね」
「ん〜,あれか,1口かじって,もおええわポイってか?」
「そんなんそんなん!」
「食べ物でも何でも,大事にせな,あかんねんけどな」