「ん? すえの子よ,焼いたアジ,いらんのんか?」
すえの子は無言で,ほんの少し首を縦に振りました.
「せやけどそのアジ,醤油かかってるやんか…今日のうちに食べんとあかんよなあ」
「おいおいなんやねん,さきの子とあとの子,目ぇ輝かせて!?」
この2人が,すえの子のために作った料理を,分けて食べたいというのです.チキンステーキ*1以来です.
ママからOKをもらいまして,あとの子が,皿を自分のところに近づけました.
「ねえパパ聞いてよお,ブルーロックの最新刊が出てんねんて!!」
「ん? 3月に,あとの子とパパが和歌山駅へ行った*2んやが,今度はさきの子よ,お前がしてみたいんか?」
「あっそういうわけやぁないねん.今度,友達とイオン行くから」
「ふむ,そんときに買うか」
「そのつもり!」
ここで,アジの皿を,あとの子がさきの子に,押しつけてきました.
アジの身が,丸ごとあります.ひっくり返したわけでもなさそうです.
いえ…
さきの子が,魚とすえの子を交互に見ています.3往復目で,その理由がわかりました.
「あとの子! ちょっと! 魚の目玉は!?」
「食べちゃった.へへ.じゃあ,身,半分食べてね」
さきの子の発言が止まりまして,黙々と食べていきました.
自分は…茶碗に,ペットボトルのお茶を少し入れました.フタをしてから,茶碗を両手で持ち,ゆっくり飲んで,口の中に冷たい液体を転がしてから,飲み込みました.
そうこうしていると,アジの皿の身が減ってきました.
しかし減らし方がおかしいのです.身の半分,尻尾に近い方を,上面も下面も食べてしまい,骨だけになっています.ムネとアタマの周辺は,身が残っています.
この状態で,お皿は,さきの子からあとの子へ….
今度はあとの子が,さきの子をにらみつける番です.身の半分以上を,さきの子が食べてしまっていました.上半身は,ワタが取られていますし,少なめです.
ともあれ,あとの子は身をつつき始めました.さきの子は満足げに,自分の分のお皿を揃えて立ち上がり,流しへ持って行きました.