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LGBT・死亡フラグと柳沢教授

学生室で本を探していると,漫画本が,漫画の棚に置かれていないのに気づきました.

この中に「LGBT」と「死亡フラグ」の入った話があったはず…と読み直してみると,ともに傑作集1に載っていました.
LGBTは,Lesbian-Gay-Bisexual-Transgenderの頭文字で,あとはwikipedia:LGBTをご覧ください*1死亡フラグは,wikipedia:フラグだと情報量が比較的少なく,以下のところが充実しています.

傑作集1を見ながら,あらすじを紹介します.LGBT×柳沢教授は「再会」というタイトルで,巻末によると,単行本7巻に収録とのことです.割烹・源三郎の暖簾から,始まります.

「オカマさんの店〜〜」は,柳沢教授ではない,同僚教員のセリフです.お通しを差し出すおかみさんが「オカマさん」と知り,目を丸めます.

遅れて柳沢教授が登場.「ほう おかみさん 男の方でしたか」という反応だけで,びっくりはしません.そして:

「ある意味では 素晴らしいことだと 思います」「男女両方の 気持ちが分かるからです」と.
他の同僚は酔いつぶれてしまい,おかみさんと柳沢教授との会話になります.寡黙な大将・源さんとの仲に関して,柳沢教授が「質問なのですが そういう場合には やはり婚姻ではなく 養子縁組みという かたちをとるのですか?」と尋ねます.曖昧なおかみさんの返答に対し,教授はさらに:

「現在の 社会システムの中で どこまで幸福に 生きていくことが 出来るか?」「あなたの場合は 特に真剣に 考えなくては ならないと 思います」.
2人(おかみさんと柳沢教授)がもっと近づくと,柳沢教授はこう言います.

「社会は もっと偏見をなくし あなたのように 真面目に恋愛を している者がいる ことを認めるべきです」「法律も 結婚のもつ意味を もっと広げるべきだ と思いますが いかがですかな?」
これでおかみさんの緊張がほぐれ,ネタばらしとなります.おかみさんは大迫三郎という名前で,柳沢教授のゼミ生だったのです.

フルネームは,柳沢教授が言っています.教授も気づいていたのでした.
店を出るときに,「源さんと三郎さん 二人三脚で源三郎なのですね」と暖簾を確認し,「あなたは 私(わたくし*2)のゼミの中で 最も優秀で 真面目な生徒でした」と言ったあと,励ましのメッセージを送ります.

おかみさんが学生時代のいでたちに,少し戻ったようにも見えます.おかみさんが源さんに寄り添い,桜を見上げるシーンで,お話を終えます.
その次のページが,死亡フラグ×柳沢教授のお話のはじまりです.「また出会った2人」というタイトルで,8巻に収録とのこと.

イタリアのマフィアのドンで,フランチェスコ・サンティーニ…という名前を言うのは,ここでも,柳沢教授なのですが,教授は次のとおり,駐車禁止を指摘するために登場します.

「サンティーニ君」は,柳沢教授と,大学院でともに経済学を学んだ仲とのこと.

教授室でお茶を飲み,昔のことを思い出します.
4ページほど,2人の若いころのシーンになります.キャッチボールをしたあと,図書館で,サンティーニがナポリに戻ると打ち明けます.麻薬で収入を得て,マフィアを維持するという思惑なのに対し,柳沢学生*3はこう言います.

「それ(麻薬)を 金儲けの対象に するのでしたら」「私は君を 軽蔑します」.
そして教授とマフィアの大物の姿に戻ります.ファミリーのドンに上り詰めたサンティーニが,机を叩いて「おれに逆らう奴は この世には誰も おらんのだ」と叫んでも,柳沢教授は動じません.

「やはり 軽蔑します」の答えに,ドンは安堵します.上を向き,「あんたに それを言って もらいたくて こうして日本に来た」と.
「もう一度 新しい人生を 送れるのだろうか」に,教授は手を取り「送れます」「あなたは これからも……私の友人です」.抱き合って「いつか また キャッチボールでもしよう」で,別れます.
サンティーニは帰国します.「(ドン 本気ですか 引退なんて)」「(もう年だからな 後はトトが うまくやってくれるよ)」のやりとりは,横書きで,イタリア語に添えられた日本語訳の体裁です.そして

「やっと 自由になるんだ」「あの鳥みたいにな……」と見上げて言うのですが

付き人がピストルを向けて「トトだけは ごめんです」.ページをめくると「パキュウウウ・・・・・ン」の銃声.
その次のページでは,若い姿の2人が,キャッチボールをしています.柳沢学生は涙しており,そこから,教授にも悲報が伝わったことが分かる,しめくくりとなっています.


それぞれ,生きることとは何か,幸せとは,未来*4とは,などを思い巡らすことのできる,傑作集に載せるのにふさわしい話だと思いました.
ところでこの2話は,“勧善懲悪もの”であるように見えてきました.といっても,おかみさんもドンも,こらしめるべき“悪”ではありません.その存在に,驚き,あるいは好奇の目で見る多くの人をよそに,颯爽と登場するのが柳沢教授です.若いときに,柳沢教授/柳沢学生の間近で影響を受けた大迫君/サンティーニ君は,教授と再会したとき,教授ならではのメッセージに,またはっとさせられています.

(最終更新:2015-02-24 晩.タイトルを「柳沢教授とLGBT,柳沢教授と死亡フラグ」から変更しました.思うことあってかけ算の順序を逆にしました)

*1:件数は示しにくいのですが,Web記事でLGBT関連を読んだら,はてブするようにしています.問題意識を持つようになったきっかけは,助手だったころの学科会議で,一般教養にジェンダーに関する科目が加わるとなり,隣の同僚が「ジェンダーって,何ですか?」と聞いてきたことです.

*2:柳沢教授フリークには野暮な補足ですが,教授が「私」と言うときには常に「わたくし」のルビがついています.

*3:話の中でこのように書かれているわけではないのですが,呼び捨ては違和感があるし,「学生柳沢」では会長まで上り詰めたモーニング/イブニング掲載の人を連想してしまうので,本記事では「柳沢学生」と表記しました.

*4:上を向くのは未来・希望・解放の象徴でしたっけ.