わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

長方形長方形問題

いきなりですが問題です…と言えればよかったのですが,いくつか図を必要とします.

上のように,長方形ABCDの内部に,長方形EFGHがあるとします.上下左右の2辺ずつはそれぞれ平行です.
このとき,ちょうど中間になるよう,線を引きます.左の2辺については,こうです.上と下には,伸ばしすぎなくてもかまいません.

残りについても,ちょうど中間になるよう線を引き,各頂点に名前を定めると,長方形PQRSができます.

そこで問題です.以下の2つのそれぞれについて,長方形PQRSの周の長さを求めてください.
(a) AB=6m,AD=10m,EF=2m,EH=4mのとき
(b) 長方形ABCDの周の長さがL,長方形EFGHの周の長さがlのとき
元ネタは,『復刻版 算数・数学教育と数学的な考え方』p.146です.多角形P1P2…Pn(n≧3)の周の長さをP1P2…Pnと略記することにします.
まずは線分PQの長さを,AB,EFを使って表せないか考えてみます.どんくさく*1,補助線を引きましょう.

このとき,3つの図形ができます.

  • AEを斜辺とする直角三角形
  • EFを辺の一つとする長方形
  • BFを斜辺とする直角三角形

ちょっと考えてみると,PはAEの中点となります*2.QもBFの中点となります.
直角三角形・長方形・直角三角形の辺が,線分ABを分割しますので,それぞれの長さをa,b,cとすると,PQ=\frac12a+b+\frac12cと表されます.
(a)の場合,b=EF=2mですが,aとcは特定できません.長方形EFGHが,長方形ABCDのどこに配置されるかによるからです.
しかしながら,a+cは,その配置に依存せず求められます.a+b+c=6mより,a+c=6m−b=4mです.
結局,PQ=b+(a+c)÷2=2m+2m=4mとなります.
これは,長方形PQRSの縦の長さです.同様にして横の長さは,PC=6m+(10m−6m)÷2=7mで求められます.PQRS=4m×2+7m×2=22mが答えとなります.
(b)に進む前に,(a)の状況で,外と内の長方形の周の長さを確認しておきましょう.ABCD=6m×2+10m×2=32m,EFGH=2m×2+4m×2=12mです.
位置的に中間の長方形PQRSについて,(32m+12m)÷2=22mですので,周の長さも内外の平均となっています.そこで(b)について,PQRS=\frac12(L+l)と予想できます.
先ほどPQ=b+(a+c)÷2と書きましたが,ここでb=EF,a+c=AB−EFを代入して整理をすると,PQ=(AB+EF)÷2を得ます.同様にして,QR=(BC+FG)÷2も言えます.なのでPQRS=\frac12(L+l)が示せました.
次の問題(前掲書pp.147-148)を見ていきます.


上のように,長方形ABCDの内部に,長方形EFGHがあるとします.異なる長方形の間で,平行となる辺の組み合わせはなく,いわば「ななめ」の配置です.
このとき,8つの線分AE,BE,BF,CF,CG,DG,DH,AHの各中点を,PからWとし,順に結ぶと,八角形PQRSTUVWができます.

そこでまたもや問題です.ABCD=L,EFGH=lのとき,PQRSTUVWはどう表せるでしょうか.
三角形で中点を結ぶ…と言えば中点連結定理です.例えば△EABと線分PQに着目すると,PQ=\frac12AB,△BEFと線分QRだと,QR\frac12EFです.
八角形の周の長さは,以下のようになります.
PQRSTUVW=PQ+QR+RS+ST+TU+UV+VW+WP
  =\frac12AB+\frac12EF+\frac12BC+\frac12FG+\frac12CD+\frac12GH+\frac12DA+\frac12HE
  =\frac12(AB+BC+CD+DA+EF+FG+GH+HE)
  =\frac12(ABCD+EFGH)
  =\frac12(L+l)
この場合も,周の長さは,2つの長方形の周の長さの平均となりました.
平行な配置に,立ち返りましょう.補助線を引き直すと,8個の三角形,そして8箇所の,中点連結定理の適用箇所が見えてきます.

AE,BF,CG,DHの各中点がP,Q,R,Sとなります*3.またBEとPQの交点をTとすると,AB‖PTゆえ△EAB∽△EPTであり,その相似比は2:1なので,TはBEの中点です.
△EABと△BEFに着目すると,PQ=PT+TQ=\frac12AB+\frac12EF=\frac12(AB+EF)となります.他の辺も同様でして,結局,PQRS=\frac12(L+l)を得ることとなります.
めでたしめでたし.

Q: 2つの配置から,何が言えるんですか?

個人的にはちょっとした頭の体操となりました.
『復刻版 算数・数学教育と数学的な考え方』では,この出題を「構造」と結びつけています.「構造としての平均」「定数の変数かと一般化」「拡張と構造の保存」だとかいった小見出しをつけ,検討がなされています.

Q: 図形問題って,このブログで以前にも取り上げませんでした?

本日の問題は,初めてです.
面白いなと思ったものを見つけたら,自分なりに書いてみます.いわば追体験です.
これまでに書いた記事から3つを挙げておきます.

Q: 今回の図は,どうやって作成しましたか?

PowerPointです.結んで作った八角形では,平行でないところもあると思います.
座標をきちんと計算して,convertコマンドで描けば,誤差なしにできるのは分かっていますが,断念しました.

*1:この算出法は,元ネタの本で「大学で,数学教育の講義を受講している学生に,実際にこの問題を与えた際にも,次のような計算方法が用いられることが多い。」に続けて書かれている式を,自分なりに具体化してみたものです.

*2:「AEを斜辺とする直角三角形」と線分PQ,そして相似を使って証明できるかなと思ったものの,その方針では,Pが線分AE上にあることが示すのが困難です.Eから線分ABと線分ADに垂線を下ろして,長方形を作り,証明するのが簡単そうです.

*3:冒頭の出題で「ちょうど中間になるよう,線を引きます」に変えて,このようにPからQまでを設定し,結んだ図形がどうなるかを問うのは,どうでしょうか? これでも結果は同じですが,PQが,BEを二等分するのは,答えを出す側が示しておくことになります.