「本日最後のスライドは,『学術出版に関するその他のトピック』というタイトルです.
『著者が論文を出版し,読者が読む』という話の周辺にある事項について,ここでいくつか取り上げたいと思います.
トピックとしては『粗悪学術誌』『オープンサイエンス』『プレプリントサーバー』『データ利用可能性ステートメント』の4つがあります.
詳細に移る前に,この4つのバックグラウンドともいえる,スライドの下に書いている2つの問題意識を,先に解説しておきます.
一つは,『論文を出せばいいのか?』です.こう書いたときの論文は,査読付きの学術論文を指します.そして『掲載は,どんなところでもいいのか?』という観点で,問題視されているのが,『粗悪学術誌』であり,『成果を捏造して,査読に通ることができてしまうのではないか?』という疑問への回答として,期待されるのは,研究データをオープン化しようという『オープンサイエンス』です.
もう一つの問題意識は,『学協会の会員や支払える人・機関だけが,論文を読める状況でいいのか?』と書き表すことができます.この意識の前提には,学術成果は研究者に限らない人類の叡智である,というのがあります.『オープンサイエンス』に含まれる,論文のオープンアクセス化は,この疑問に対する直接的な答えとなります.
『プレプリントサーバー』の代表的なものはarXiv(アーカイブ)ですが,その日本版ともいえるJxiv(ジェイカイブ)というのを,JST・科学技術振興機構が運営しています.なおプレプリントは『査読前論文』,オープンアクセスのうちグリーンモデルに基づく原稿は『著者最終稿』といった呼び分けによって,区別されますが,読者にとっては,どちらの形態でも,学会や会議が発行する正式版より前に,無料で,内容を知ることのできる機会となります.
データ利用可能性ステートメントも,オープンサイエンスの推進において近年,注目されています.オープンサイエンスの実現にはいろいろな道筋があるのです.
それでは箇条書きに戻って,順に詳しく見ていきましょう.…」