「パパ,柿の収穫,おつかれさま」
「ああ,まあ.今何時なん?」
「12時半」
「おっと,昼食タイムをとっくに過ぎてたんか」
「時計,持ってないん?」
「うーん,こういう作業をするときは,腕時計せんと,スマホも持たんと,んでズボンのポケットに,時刻の分かるデジタル式の歩数計を入れてるんやが,なんか表示がおかしくてやなあ」
「ところで,そこの木,ぜぇんぶ実,穫ったね!」
「といえればええんやが,てっぺんの10個ほどは,道具が届かんかったなあ.自然に落下するんは,難しやろから,カラスさんに食てもらうか」
「まあええやん.はよ着替えて,お昼,食べに行こ」
「あいよ…そうやそうや,穫り入れながら,思い出してんけど」
「なに?」
「何日か前にな,晩ごはんで,サラダ出てたやろ?」
「いつのことやったっけ?」
「ま,日付は重要やないな.そのサラダにやな,スライスされた,柿の実が入ってたんやが」
「ああ,あれ! おばあちゃんが作ったんやで.柿,穫れすぎたって言うて」
「あれな,最初見たとき,色合いと大きさから,サーモンと勘違いしたんやが」
「あとの子ちゃんも言ってた!!」
「んで口に入れたら,ドレッシングのかかった,甘い柿なんよな」
「そやねん.子どもらも気ぃついて,あとは食べやんかってん」
「ありゃま…」
「皮を剥いて4つくらいに切って,タッパーに入れてくれてたら,みんな食べると思うんやけど」
「切るの大変なんよなあ.ケガにも注意やし」
「あとの子よ,おはようさん」
「おはよお…」
「早朝から,餅,食うとんのか」
「うん,お腹がすいてたし…」
「食べ物,というと,ちょっと前にな,サーモンに見せかけて柿が入ってたサラダ,あったやんか」
「ああそれ覚えてる!! うちも,サーモンかと思った!!」
「んで食べたん?」
「あれねえ,たしか,お姉ちゃんと向かい合わせで座って」
「ふむ」
「あたしが実をお箸でつまんで,これサーモンかなあってお姉ちゃんに言うたんよ」
「けど,色は似てるが,固さは,サーモンとちょっとちゃうよな.食たんや?」
「そうやねん.そしたら『思ってたんと違う!』やったやんか,あれ!!」