「昨日の夜にやな…」
「なに,パパ?」
「あ,さきの子とあとの子がやな,パパふだんおる部屋に,食べ物持ち込みで入ってきたんやな」
「へえ」
「さきの子は,チーズを何やらしてたな」
「何かしてたね,オーブンで」
「やねんけど,ちょっとした出来事になったのは,あとの子のほうやねん.『たこせん』の袋を手にして,1枚,取り出してたんよな」
「たこせん?」
「薄ぅて平べったい,大判かっちゅう感じの,赤オレンジ色のお菓子や.屋台なんかやったら,たこ焼き挟んでマヨネーズかけて売ってるやつ…の,おせんべい」
「ああ,あれね」
「そいでパパが,『お前らここに来るたび,ちゃう食いもん,持ってくるのぉ』って言うたらな…」
「言ったら?」
「あとの子が,手ぇに持ってたたこせん,1枚,パパに差し出してくんねん」
「あげるの?」
「そや思って,1枚くれるんかって聞いたら,『ひとくち』って言うんやな」
「かいらしやん」
「いやもぉな,郵便ポストにはがきを差し出すみたいに,たこせんが迫ってくんねん.パパの口はポストの差出口な」
「そんなん!」
「口をできるだけ横長にして,たこせんの縦長の端を口の中に入れて,ここっちゅうところで,パリッと噛んだらやな…」
「…」
「えらいところで割れてやな.1枚のうちの,6割くらいが,パパのもんになってもぉてん」
「分け方,間違えた?」
「分けるっつっても,パパの噛み方で,そないなってやな.パパも,取り過ぎたって思たで.口から離して,噛み跡ついてないところのいくらかを,あとの子に返したほうがええぞと思たらそこに…」
「そこに…?」
「あとの子のチョップが炸裂やで.パパが噛んでたところのたこせんを,上から割ってきおってな」
「割れたん?」
「壮絶やったんやで.さっき6割くらいっちゅうたやろ.チョップの一撃で,パパの口の前に出てたたこせんが,一円玉のサイズになってんやから」
「えらい減ったねえ(笑)」
「距離とって見てた,さきの子も,ずっこけて笑いおったで」
「そんなん」
「あとの子は,落っこちたたこせん拾って,パパも,口から取り出して取り分これだけかよぉとか,言うたんやけどな」
「けど…『たこせん』なんか,誰が買ったんかなあ?」
「ママが,あとの子に買うたんやないの!?」
