話はすぐ上のε-δの続きですが,異なる主張なので,エントリを分けておきます.
「ε-δの効果的な例」として挙げた証明問題について,本によっては,数学的に正しい「証明」しか書いていないかもしれません.これでは学習効果が薄れます.その証明を読んで,類題が出たときにもその証明法が適用できるという保証がありません.
上述の本には,「証明」だけでなく,「証明するための考え方」が書かれています.すなわち,証明という名の道筋を構築することを目的として,スタートラインに何があって,どんな道具を使っていってゴールを目指せばいいかが,きちんと記されています.個人的にこれは,エンジニアリングデザインの能力を身につけるための第一歩になると考えています*1.
プログラミングも同様で,私の授業にせよ,書籍にせよ,ソースコードを頭から読むだけでは,のちのち自分でプログラムを作るまで至れるかどうかわかりません.
授業では,プログラミングのための思考過程があることに気づいてほしいものです.すなわち,まず何を目標としていて,言語仕様に含まれているどんな機能を使っていけば,プログラムが完成するかまでの筋道です.
いくつかの例題を通して,完成までの思考の流れと完成品(プログラムコード)とは必ずしも対応しないという事実に気づき,自分が手を動かすプログラミング科目の中で,あるいは授業を離れてプログラミングする際に,活用してほしいと願っています.
*1:もちろん,ε-δを知らなくても,エンジニアリングデザイン能力が身についている人もいます.大学の数学は面白いが,デザインとは何かよく分からないという人は,とにかくまず上述の本を通読することをお勧めします.そして,デザインの授業を受けるなり,研究室で指導を受けるなりしていってください.エンジニアリングデザインに対する私の考え方は,いつになるか分からないけど,とりまとめてこの日記で書く予定です.