わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

入力する,出力する

先週金曜日から,4年ゼミが始まりました.
やり方は後期の3年ゼミとほぼ同じ.持ち回りで学生がPowerPointを使って発表し,同学年の学生から質問をしていきます.時間の経過に合わせて,質問可能な学生を上の学年にも広げていき,学生からの質問が尽きたら,教員が質問とコメントをしていきます.
初回は,対象とする問題文を適切に理解しておき,問題を解くのに必要な情報を明らかにすることが望まれています.しかし,先生から言われれば,「あ,そういうことか」*1と思えても,そういう突っ込みがこないよう入念に準備するというのは,難しいものですね.私が今の能力を持ったまま,4年生で初回の発表をしても,先生方から厳しい指摘を山ほど受けていたように思えます.
ともあれ,先生モードに.私も,学生の発表の気になる記述や発言には,課題文(英文)に当たりますが,あまり細かいところには目が届きません.
とはいえ,こういうやりとりもありましたが…
「えっとね,スライドの6枚目を出してください」
「…はい」
「ここの1行目の最後に『…を入力』とありますが,これは『…を入力する』と読んでいいんですね」
「…はい」
「あっと,スライドでこういうときに『…を入力する』と文にしないといけない,というわけではないよ.ここは『…を入力』という体言止めで,いいと思います.僕が聞きたいのは…その文の主語です.入力するのは,誰ですか?」
「はい,えっと…」
「んじゃその質問は保留して,次のスライドを出してください」
「え? はい」
「ここには『…を出力』とありますね.これの主語は?」
「えっと…プログラムです」
「うんそう.で,前のスライドに戻って」
「…」
「違和感がありますわな.入力と出力の主語が違うから」
あとは,

  • 原文に当たると,The input is ... (入力は…である),The output must be ... (出力は…でなければならない)のように書かれているので,これに合わせてスライドを作るなら,「…を入力」「…を出力」という表現がよくない.
  • 入出力に関する定番の日本語表現は,「〜は,〜を入力に取り,〜を出力する」であり,「〜は,〜を入力し,〜を出力する」とは言わない.
  • 出力を含め,計算機が処理をするときに,計算機なり実行プログラムなり関数なりを主語にする表現が,英語・日本語ともによく見られるので,積極的に使ってよい.

あたりを指摘しました.
関連: 入力の反対は出力だけど,主語に注意 - わさっき
(5月31日: 見出しに,カテゴリー「日本語」を追加しました.)

*1:本日の趣旨から離れますが,私自身は,学生の発表や質疑を聞きながら「あ,そういうことか」と感じることを,記述から知見を引き出すための第一歩として,大事にしています.そして,一見不自然な記述やスライドレイアウトになっていても,そのようにした意図を「これは,〜としたかったのですね」という形で尋ね,確認することがあります.