- 作者: 三浦展
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2008/08/09
- メディア: 新書
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大学教員が「そうそう,こういう学生いるんだよね」と,いわば溜飲を下げるのにはまあまあいいかもしれません.申し訳ないのですが分析や提言は,得られるものはありませんでした.オンライン大学を提案するなら,サイバー大学や放送大学くらいは現状を確認し,それとの違いを示してほしいものです.
ともあれネタにマジレスっぽいものを.
●「学生をバカにしている.謝って欲しい」(E教授)
新入生を対象にした授業で「あなたたちは学力低下が叫ばれるゆとり教育世代なのよ」と言ったら,その後のアンケートで「先生は学生をバカにしている.謝って欲しい」という信じられない回答が返ってきた.大学教授になって10年を超えるが,謝ってと言われたのは初めて.
(p.96)
売り言葉に買い言葉ですね….
もちろんパソコンや携帯電話で授業が受けられるようになると,ますます若者のコミュミケーション力が落ちるじゃないかという意見もあるだろうが,逆に,先ほどの地域の拠点とか,社会の側に若者を育てるための様々なプログラムが用意されていれば,コミュニケーション力も社会力も育つでしょ? っていうか,とりあえず働いちゃえば,コミュニケーション力も社会力も育つんで,むしろ働きながら大学で学ぶというのをひとつの標準にしたほうがいいんじゃないかと思いますね.
(pp.223-224)
「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」*1ということわざを思い出さずにはいられません.
- 作者: 小笠原喜康
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/09/13
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主張の一つひとつに異論はないのですが,少し距離を置いてみると,疑問がわいてきます.まず,この本は誰に向けて書かれたのか.明示されていないし,読み終えても,誰に薦めようかなあと思ってしまいます.
次に引っかかったのは,「学力」の対象を絞り込めていないことです.小中高大で違いますし,大学でも講義とゼミとで考え方が異なってきます.それと,学力の評価方法について,言及が見られませんでした*2.身近に思い浮かぶのは,各児童生徒が知識・技能などを身につけたかを確認するためのテスト,高校や大学(企業もかな)などで選抜するための学力試験,大学の授業で合否(単位を与えるか)を判定するためのテスト,個人ではなく教育行政を評価するための全国学力テスト*3ですが,それぞれ目的も,そして被評価者の行動も,異なるものです.しかしそれらの区別や関係について,検討がなされているようには読めませんでした.
なお,
「知識」とは,どこかにあったりなかったりするのではなく,私がある場面において,その場面の要求にふさわしくふるまうコトの別名である.
(p.119)
について,ここで定義されているのは学力の樹モデル*4でいう「幹」のことであり,上記の『どこかにあったりなかったりする』や,『モノ的知識観』(p.104)で表わされる従来型の知識は,「葉」に相当するものと理解しました.
*1:µñ ¢wçm@ wK¤çÎȵQ @nÉ ðùܹéb
*2:数値により評価せざるを得ないことは,p.31で書かれていますが.