わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

大学生に成長度テスト

それぞれつけた“はてブ”は次のとおり.

『同じ学生が2度受ければ、成長度を「可視化」できると期待する』

http://b.hatena.ne.jp/takehikom/20120216#bookmark-81104473

「教育評価」の諸概念が、高等教育においても適用可能なことを、大学教員間で共有できないものか/文科省の検討は、賛成というわけではないが関心はある

http://b.hatena.ne.jp/takehikom/20120216#bookmark-81104473

ほんの少しだけ,深入りしたい.なお思うところあって本日は常体を用いる.
まず思い浮かんだのは,大学生向け外在的評価の仕組みが,文部科学省主導でなされようとしている,ということ.
連想するのは,2007年度からのいわゆる全国学力テスト.悉皆調査で実施することへの反発の声は,ずいぶん大きかったと理解している*1
先ほど「外在的評価」と書いたが,この用語は『教育評価 (有斐閣双書)』による.「外部評価」と書くと一般に,教育体制や環境の評価を指し,学習者の学力を測ることが含まれにくいため,区別するために用いている.とはいえこの使い分けは,自分独自のものかもしれない.
今回の件も,政策決定に直接携われない数多くの人の声が“ノイズ”とみなされ,すくい上げることができずに,全国規模または小規模で実施されていくのではないかと懸念する.
次に思い浮かんだのは,批判者・学習者の話.あなたは「批判者」ですか?「学習者」ですか? ~本『QT 質問思考の技術』 - ライフハックブログKo's Styleにある「選択の地図」である.なお,next49さんが批判者の道を歩みつつある,スイッチして学習者になってほしい,と呼びかける意図はない.今回の件そして2つのはてブを通じて,自分自身が無意識のうちに批判者の道をとろうとしていないかと,警鐘を鳴らすに過ぎない.
これから検討に入るという,観測気球といっていい段階の報道を受け,胸に手を当てて考えたい.授業科目や研究室・ゼミで目にする学生が,学科等の教育目標やカリキュラムのもとで,支障なく学習できているだろうか.シラバスどおりに教えていて,修士は年1回外部発表だからとアサインしていて,いいのだろうか.自分自身の教育・研究・その他(当雑記を含む)の活動が,日常接する学生にどう影響を与えるだろうか(願わくば良い方向へ!).社会のニーズあるいは空気を読めているのだろうか.…
その疑問,というより自己の不安は,いわゆるかけ算の順序論争のもとで調査・検討した件を,大学教育に振り向けることで,ある程度,解消できそうに思う.演算決定は,制約の下で一つの答え*2を形にする活動,すなわち(エンジニアリング)デザインに対応する.教材研究・授業研究は,授業準備に組み込めばいい.
教育評価については,「目的と目標は1対多」しかし「目標と,それを実現する手段は多対多」であることを,忘れないようにしたい.「1対多」「多対多」は,データベース設計の用語である.後者はここでは,「目標と手段は1対多」と「手段と目標は1対多」の関係と言える.
成長度テストの「手段と目標は1対多」とは,こう翻訳できる…1回のテストに,学生本人,大学教員,高等教育機関,そういったテストの企画主体,問題作成者,そしてもちろん文科省で,それぞれ異なる“思惑”を持つ.このことは現段階でも,想像に難くない.
あともう一つ,連想するものがある.複数大学間の共通テストの存在である.工学系数学統一試験(EMaT)というのがある.問題・正解も公表されているが,《実施理由と目的など》のところで取得できるPDFファイルから,なぜ既存の数学統一試験を採用しないのかを含め,このテストの5W2H*3を知ることができる.
受験者数,参加大学は,決して多いとは言えない.和歌山大学も初回実施時から名前が書かれているが,受験した人数だとか効果を知っているわけではない.履修手引が手元にないので,断言というわけにはいかないが,TOEICである点数以上なら英語の単位が認定されるのと同様に,このEMaTの成績がある水準以上にあれば,単位認定がなされるはずである.
まとめ.経験をないがしろにするわけにはいかないが,やはり歴史から学ぶことはたくさんあるように思える*4.メディア力の知れている,一人の大学教員としては今後も,長期にわたる微小増加的な改善を続けていくしかない.そして,このエントリを書くことで,自分自身,少し認識が変わったようにも感じる.言葉にはできないけれども.

*1:個人的には,全国学力テストの「評価」や「学力」よりも,「出題」に関心がシフトしている.小学生向けには5年まで,中学は2年までの学習内容をもとに,毎年“新問”---算数Aに限ると,比較を図れるよう,過去問の類題も多いのだが---が出題され,時期をおいて全問,公表されている.

*2:“唯一解”ではない.

*3:"How much"については,受験料が無料と明記されているが,運営の会計報告は書かれていない.

*4:wikipedia:オットー・フォン・ビスマルク